このテーマとは

IPOテーマは、新規株式公開(Initial Public Offering)と関連事業全般を扱う。具体的には、(1) 主幹事・引受証券会社の引受業務、(2) 監査法人・証券会社・印刷会社・コンサルの上場準備支援、(3) 上場予定企業(IPO候補・将来上場見込み企業)、(4) ベンチャーキャピタル・PE のエグジット、(5) 個人投資家の IPO 投資、(6) 上場後の株式売出(PO)・ロックアップ解除、(7) 外国企業の日本上場(DR・複数上場)、までを射程に入れる。

事業環境は、東証区分(プライム・スタンダード・グロース)、SPAC、東証の上場基準改定、新規上場企業の業種傾向、株式市場の地合い、で形成される。

なぜ注目されているのか

第一の追い風はスタートアップ・新興企業の上場ラッシュ継続である。グロース市場での新興 IT・SaaS・バイオ・ヘルスケア・脱炭素関連企業の上場が継続しており、政府の「スタートアップ育成5か年計画」、アクセラレータ、CVC、上場前ファイナンスの拡大で、スタートアップエコシステムは構造的に拡大している。

第二に、PE・VC エグジット環境の改善。グローバル PE・国内独立系 VC・CVC からのスタートアップ投資、PE による中堅企業の MBO・カーブアウト後の再上場、で IPO はエグジット手段として定着している。M&A ・事業売却と並ぶ主要エグジットルートとして機能している。

第三に、東証市場区分改定とプライム上場基準。プライム市場は流通株時価総額・流通比率・英文開示など実質的な要件が強化され、上場維持基準を満たさない企業の市場区分変更・上場廃止が現実化している。逆に、グロース市場は新興企業の登竜門として、スタンダードは中堅企業の中核として、市場区分の役割分担が明確化している。

第四に、海外資金・外国機関投資家の関心拡大。東証 PBR 改善要請、コーポレートガバナンス改革、円安局面での日本株割安感、で外国機関投資家の日本株関心は構造的に強まっている。これは IPO 銘柄の流動性・公開買付応募率・公開価格決定にも影響する。

逆風は IPO 後の株価下落・低迷の構造的問題と、新興市場の流動性不足である。グロース市場上場後にロックアップ解除・大株主売却で株価が長期低迷する例は多く、個人投資家の IPO 投資離れにつながるリスクがある。米国・欧州 SPAC ブームの崩壊は IPO エコシステムの脆弱性を示した。

関連する事業領域

含まれる業種は、証券・商品先物(主幹事・引受・売出)、その他金融業(VC・PE・上場前ファイナンス)、サービス業(上場準備支援・コンサル・印刷・IR)、情報・通信業(上場関連 SaaS・株主管理ツール)、銀行業(メインバンク・引受参加)など。

「IPO関連銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 主幹事証券(収益が IPO 件数・引受手数料に連動)と上場準備支援企業(IPO 候補数に連動)で収益構造が違う、(b) VC・PE のエグジットは IPO だけでなく M&A・セカンダリー売却も主要ルート、(c) IPO 件数・公開価格は株式市場の地合いに強く左右され、業績変動が大きい、という点。

財務的にどう評価するか

IPO テーマで最初に見たいのは、主幹事証券では引受件数・引受金額・売買代金・公開価格決定能力、上場支援企業では支援先数・契約件数・上場成功実績、VC・PE では投資先数・エグジット実績・IRR、を見る。

利益面では、主幹事証券は引受手数料が中核、上場支援は契約数連動、VC・PE はキャピタルゲインの実現タイミングで業績が大きく振れる。市場地合いに連動する業績変動が大きく、業績の継続性・予測性は低い前提で評価する必要がある。

落とし穴は3つ。第一に、IPO 件数は株式市場の地合いに強く左右され、市場環境悪化で件数が急減する。業績の安定性は限定的である。第二に、グロース市場上場後の株価低迷で、上場支援企業のレピュテーションが影響を受ける場合がある。第三に、VC・PE のキャピタルゲインは保有銘柄の上場・売却タイミングで業績が大きく振れる。継続的なエグジット実績の確認が必要になる。

中長期では、スタートアップエコシステムの拡大、上場基準・市場区分制度の変化、海外投資家関心、業種別 IPO 動向(IT/SaaS/バイオ/脱炭素)、が事業価値の指標になる。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) IPO 関連事業の売上規模・利益率、(b) 引受件数/支援先数/投資先数の推移、(c) 主要市場区分(プライム/スタンダード/グロース)への対応状況、(d) 海外案件・外国企業上場への関与、を最低限チェックしたい。

関連テーマの事業再編M&AフィンテックPBR1倍割れ株主還元 と併読すると、IPO が単独イベントではなく、スタートアップエコシステム・コーポレートガバナンス改革・株式市場活性化の交差点で動く資本市場の中核機能として位置づけられる構造が立体的に見える。