このテーマとは
ヘルスケアITは、医療・健康分野におけるITソリューション全般を指す。電子カルテ・調剤薬局システム・レセプト(診療報酬請求)システム・医療画像管理(PACS)といった医療機関向け基幹システム、医療画像AI診断支援、製薬向け臨床試験データ管理、健康保険組合向け健診データ管理、消費者向け健康管理アプリ・ウェアラブル連携、薬局チェーン向けシステムなどが含まれる。
本テーマには、医療機関向けITベンダー、医療データSaaS、医療画像AI・診断支援AI、調剤・物流システム、PHR(パーソナルヘルスレコード)プラットフォーム、製薬・治験データ管理ベンダーまで広く該当する。
なぜ注目されているのか
日本の医療費は2023年度で約47兆円、社会保障給付費は約134兆円で、いずれも高齢化を背景に増加し続けている。医療費抑制と医療の質向上を両立させるためには、ICTによる業務効率化・データ連携・予防医療の強化が不可欠とされ、政策・予算が継続的に振り向けられている。
具体的政策として、(1) オンライン資格確認の原則義務化(2023年4月)、(2) 電子処方箋運用開始(2023年1月)、(3) 医療DX推進本部による電子カルテ標準化と医療情報プラットフォーム構築、(4) マイナンバーカードと健康保険証の一体化、(5) PHR推進、などが進行している。これらは医療機関向けシステム市場・健康データプラットフォーム市場を構造的に拡大させている。
技術トレンドでは、医療画像AI(CT・MRI・内視鏡・病理画像の自動所見)の薬事承認が増加、製薬向けでは治験管理SaaS・リアルワールドデータ活用、消費者向けではウェアラブル機器とPHRアプリ連携、調剤薬局では電子薬歴・服薬指導アプリ、と各レイヤーで成長領域が広がっている。
ただし、医療機関のIT投資は単価・更新サイクルが長く、新規参入は数年がかりの営業活動が必要。電子カルテ市場は大手3社程度の寡占構造で、新規プレイヤーが切り崩しに苦労する構造もある。
関連する事業領域
含まれる業種は、情報・通信業(医療向けSaaS・電子カルテ・医療AI・調剤システム)、サービス業(医療コンサル・データ分析)、精密機器(医療機器組み込みソフト)、卸売業(医療IT商社)、その他(製薬向けITベンダー)など。
「ヘルスケアIT」の中でも、(a) 病院向け基幹システム(電子カルテ・PACS)、(b) 調剤薬局・診療所向けシステム、(c) 健康保険組合・自治体向けシステム、(d) 製薬・治験データ管理、(e) 消費者向けアプリ・PHR、(f) 医療AI・診断支援、で顧客特性と収益構造が大きく異なる。
財務的にどう評価するか
ヘルスケアIT企業の評価軸は、(a) 売上構成(フロー収入=システム導入+ストック収入=保守・SaaS料金)、(b) ARR成長率・解約率、(c) 営業利益率、(d) R&D比率、を見る。SaaS型ビジネスを持つ企業は、ストック収入比率の高さが業績の安定性を担保する。電子カルテ・調剤システムなど更新サイクルの長い領域は、フロー収入の集中(更新年に大型受注)でブレが出やすい。
医療AI・診断支援系の企業では、薬事承認取得済みプロダクト数・国内主要病院での導入実績・グローバル展開状況が、技術力と事業性の指標になる。R&D比率は売上の15%超が標準的で、承認取得まで複数年の投資が先行するため短期的な営業利益率は低めに出る。
落とし穴は、(1) 医療機関向けは商談サイクルが長く、四半期業績が会計上のフローに大きく振れる、(2) 診療報酬改定・規制変更で売上前提が動く、(3) 医療データの取り扱いには個人情報保護とセキュリティの厳格な要求があり、インシデント発生時の信頼喪失リスクが大きい、(4) 「ヘルスケアIT関連」と打ち出しても本業の医療向け売上比率が小さい企業もある、の4点。セグメント開示で医療向け売上の比重を確認したい。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) フロー/ストック売上比率、(b) ARR成長率・解約率(SaaS型の場合)、(c) 主要顧客(病院・調剤・健保)別の売上構成、(d) 薬事承認取得状況、を確認したい。
関連テーマの医療機器・遠隔医療・SaaS・AI・DX・デジタルヘルス を併読すると、医療デジタル化の構造と各レイヤーの市場動向が掴みやすい。