このテーマとは
EC(Electronic Commerce)は、インターネット経由での商品・サービス取引市場全般を指す。総合モール(Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング)、自社EC(D2Cブランド)、フリマアプリ・C2Cプラットフォーム、BtoB EC、サブスクリプション販売など、形態は多様化している。
本テーマには、(1) ECモール・プラットフォームを運営する事業者、(2) ECで商品・サービスを販売する事業者、(3) EC物流(フルフィルメント・ラストワンマイル)を担う物流業者、(4) EC向けSaaS(カート・決済・在庫管理・マーケティング)、(5) EC専用倉庫・物流不動産まで広く含まれる。
なぜ注目されているのか
経済産業省の電子商取引市場調査によると、日本のBtoC EC市場規模は2023年に約24.8兆円、EC化率は9.4%まで上昇した。米国20%超・中国30%超と比べてまだ低く、物販分野では今後も二桁成長の余地がある構造になっている。
需要面の追い風は、(1) スマートフォン経由の購買が日常化、(2) コロナ禍で定着した非対面購買習慣、(3) 高齢層の利用拡大、(4) D2Cブランドによる新規参入の容易化、(5) 越境ECによる海外顧客の取り込み、と多層的。一方で、競争環境はモール大手3社の寡占が進み、出店者にとっての販促費・広告費が継続的に上昇している。
物流・在庫管理側でも構造変化が進む。EC物流は通常物流と比べて梱包単位が小さく、ピッキング・配送のコスト構造が異なる。Amazonの物流網拡大、楽天のワンデリバリー構想、自前配送網を構築する小売大手など、物流の自動化・ロボット化への投資が続いている。EC専用大型物流施設(マルチテナント型物流不動産)の需要も底堅い。
ただし、EC事業者単体の利益率は概して低く、価格競争・販促費負担・物流費上昇で営業利益を出しにくい。「売上は伸びているのに利益が出ない」EC企業が多い構造を理解しておく必要がある。
関連する事業領域
含まれる業種は、情報・通信業(ECプラットフォーム・EC SaaS・決済代行)、小売業(自社EC運営・ネット通販事業者)、卸売業(メーカー直販・ECディストリビューター)、サービス業(EC運営代行・コンサル)、陸運業(EC物流)、不動産業(物流不動産)など。
「EC銘柄」と一括りにすると、収益構造は全く違う。モール運営者は手数料収入、出店者は商品売上、物流事業者は配送料、SaaSベンダーはサブスク収入で、利益率も成長率も別物になる。
財務的にどう評価するか
EC事業者を評価する際は、(a) 流通総額(GMV)の成長率、(b) テイクレート(売上/GMV、モール手数料率の代理指標)、(c) 営業利益率、(d) 在庫回転日数、をまず見る。GMVが伸びていても、テイクレートが下がっていたり営業利益率が悪化していれば、競争激化で利益化できていない可能性が高い。
商品販売型のEC(小売業)では、粗利率・販管費率(特に広告宣伝費比率)・在庫回転日数を確認したい。EC事業の販管費は広告費・物流費・決済手数料が主要項目で、売上拡大とともに広告費がCAC(顧客獲得コスト)として急増していないかを注視する。リピート率・LTV(顧客生涯価値)の開示があれば、CAC回収期間を計算してビジネスの持続性を判断できる。
物流・倉庫を含む垂直統合型EC(自社物流網保有)は、設備投資負担が重く、ROA(総資産利益率)・FCF(フリーキャッシュフロー)が圧迫される。倉庫稼働率・配送1件あたりコストの推移を中期計画で確認したい。
落とし穴は、(1) GMV伸びと営業利益の乖離、(2) モール出店者の販促費依存(広告主導のグロース)、(3) 越境ECの為替・関税リスク。販管費の中身(広告費・物流費)を四半期ベースで追うと、ビジネスの実態が掴める。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) GMV成長率と営業利益率の方向感、(b) 広告費・物流費率の推移、(c) 在庫回転日数、(d) リピート率・LTV、を確認したい。
関連テーマの物流・不動産投資信託・SaaS・広告・フィンテック を併読すると、ECビジネスを支える周辺業界が把握できる。