このテーマとは

創薬は、新規医薬品の研究・開発・製造・販売プロセス全般を指す。具体的には、(1) ターゲット探索(疾患メカニズム解明)、(2) 化合物・抗体・核酸のスクリーニング、(3) 前臨床試験(細胞・動物実験)、(4) 臨床試験(第1〜3相)、(5) 薬事承認、(6) 製造・販売、を含む長期プロセス。新薬の研究開発期間は10〜15年、開発費は1製品あたり1,000億〜数千億円規模が一般的。

本テーマには、(1) 大手製薬企業(自社研究開発)、(2) 中堅製薬・専門領域特化型製薬、(3) 創薬バイオベンチャー、(4) CRO(医薬品開発業務受託)、(5) CDMO(医薬品製造業務受託)、(6) 製薬向け研究機器・試薬・データプラットフォーム、まで含まれる。

なぜ注目されているのか

創薬は、医療ニーズの拡大と医薬品市場の構造変化を背景に、長期成長領域として位置付けられる。世界医薬品市場は2024年に約1.7兆ドル規模、2030年に2兆ドル超へ拡大すると予測される。日本市場は約11兆円規模で、薬価改定圧力下でも特定領域(がん・希少疾患・中枢神経)では高成長を維持している。

新規モダリティの拡大が、創薬市場の構造変化を生んでいる。(1) 抗体医薬(売上トップ薬剤の半数以上)、(2) ADC(抗体薬物複合体)、(3) 遺伝子治療・細胞治療(CAR-T等)、(4) mRNA医薬(コロナ禍ワクチンで実用化、がん・希少疾患へ応用研究)、(5) 核酸医薬(siRNA・アンチセンス)、(6) 二重特異性抗体、と低分子から外れたバイオ・新規モダリティの薬剤群が市場を牽引している。

技術トレンドとしては、(a) AI創薬(機械学習による化合物設計・標的予測)、(b) 個別化医療(遺伝子解析に基づく個別最適治療)、(c) リアルワールドデータ活用、(d) デジタル治療(DTx:処方アプリ)、(e) iPS細胞由来再生医療、が成長領域。

ただし、創薬リスクは極めて高い。臨床第3相に進んだ薬剤の半数以下しか承認に至らず、開発失敗1件で数百億円規模の損失が出る。さらに、特許切れ(パテントクリフ)による売上急減、薬価改定による単価圧縮、新興バイオシミラーとの競合、と中長期リスクも積み重なる。

関連する事業領域

含まれる業種は、医薬品(大手製薬・中堅製薬・バイオベンチャー)、化学(医薬中間体・原薬)、精密機器(医薬研究機器・遺伝子解析装置)、サービス業(CRO・CDMO・データプラットフォーム)、卸売業(医薬品卸)など。

創薬のサブテーマは、(a) 大手製薬(既存ポートフォリオ+自社研究開発)、(b) 専門領域特化型製薬(がん・希少疾患・中枢神経等)、(c) バイオベンチャー(新規モダリティ・パイプライン中心)、(d) CRO(治験・データ管理受託)、(e) CDMO(医薬品受託製造、特に抗体・mRNAの受託)、で収益構造と成長性が大きく異なる。

財務的にどう評価するか

創薬企業の評価軸は、企業のステージ別に大きく異なる。

(1) 大手製薬・中堅製薬:(a) 売上成長率、(b) 営業利益率(業界平均15〜25%)、(c) R&D比率(売上の15〜20%)、(d) パイプラインの分散度、(e) パテントクリフ(特許切れ時期)と新製品の補完力、を見る。特定主力薬剤の売上シェアが50%超を占める企業は、特許切れリスクが大きい。

(2) バイオベンチャー(研究開発フェーズ):(a) 主要パイプラインの開発段階、(b) ライセンス契約・マイルストーン収入、(c) 手元現金・キャッシュバーン、(d) 大手製薬との提携状況、を見る。多くのバイオベンチャーは黒字化前で、株価評価は将来期待が中心となる。

(3) CRO・CDMO:(a) 売上成長率、(b) 営業利益率(業界平均15〜25%)、(c) 受注残、(d) 海外売上比率、を見る。CDMOは特にmRNA・抗体・遺伝子治療向け製造受託で需要が拡大しており、設備投資回収期と相まって成長余地が大きい。

落とし穴は、(1) 治験失敗による株価急落、(2) 主力医薬品の特許切れ・後発医薬品参入による売上急減、(3) 薬価改定(毎年改定移行)による収益圧迫、(4) 「創薬関連」と打ち出しても売上構成比が小さい、(5) M&Aののれん減損、の5点。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 売上構成と主力薬剤の特許状況、(b) パイプラインの数と開発段階、(c) 営業利益率・R&D比率、(d) ライセンス収入・提携状況、を確認したい。

関連テーマのバイオテクノロジー再生医療核酸医薬がん治療ワクチン医療機器 を併読すると、医薬品市場の構造と新規モダリティの広がりが整理できる。