事業概要
新日本科学は、医薬品の研究開発支援を中核事業とするCRO(Contract Research Organization)であり、創薬・医療技術の向上を通じて人類の健康に貢献することを企業使命としています。創業以来培ってきた経験と最新設備、高度な技術力を駆使し、医薬品開発の初期段階である非臨床試験から、臨床試験までを一貫してサポートしています。特に、遺伝子類似性が高いことからバイオ医薬品開発で需要が拡大している実験用サル(NHP)について、自社グループ内での繁殖・供給体制を確立していることが大きな強みです。近年は、医薬品開発におけるアウトソーシング需要の増加や、核酸医薬、遺伝子治療といった新規創薬モダリティの研究開発本格化を背景に、CRO事業のさらなる強化を図っています。また、自社開発技術を基盤としたTR事業(トランスレーショナルリサーチ事業)を第3の成長エンジンとして位置づけ、新製剤開発や経鼻ワクチン開発などを推進し、事業ポートフォリオの拡大を目指しています。メディポリス事業では、ホスピタリティ事業と地熱発電事業を展開し、地域経済への貢献も行っています。
直近決算ハイライト
2026年3月期の連結業績は、売上高が前年比0.3%増の325億円と微増となりました。しかし、営業利益は同11.1%減の27億円、経常利益は同9.6%減の58億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同7.3%減の46億円と、利益面では減収減益となりました。これは、CRO事業における売上高および営業利益の減少が主な要因です。CRO事業では、売上高が1.0%減少した一方で、TR事業は売上高が99.8%増の108百万円、メディポリス事業も売上高が42.4%増の804百万円と、それぞれ大きく伸長しました。特にTR事業は、営業損失が40億円超と依然として赤字ですが、売上高の増加は新たな収益源としての成長の兆しを示しています。メディポリス事業では、営業損失が4.2億円から65百万円へと大幅に改善しています。キャッシュ・フロー面では、営業活動によるキャッシュ・フローは前年比18.4%増の83億円と堅調に推移しました。これは、税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費の計上、棚卸資産の増加などが影響しています。一方で、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得などにより、67.9億円の支出となりました。財務活動では、短期借入金の純増加や長期借入金の収入があったものの、長期借入金の返済や配当金の支払いにより、45.1億円の収入となりました。
強みと競争優位性
新日本科学の最大の強みは、CRO事業、特に実験用サル(NHP)を用いた非臨床試験における独自性と安定供給体制です。NHPは、ヒトとの遺伝子類似性が高く、バイオ医薬品開発において代替が難しい重要な動物種ですが、その調達・管理には高度な専門性と設備が求められます。当社は、唯一自社グループ内でNHPの繁殖供給体制を確立しており、安定的な調達能力を有することで、競合他社との差別化を図っています。また、GLP基準に準拠した厳格な品質管理体制や、動物福祉に配慮した倫理的な試験実施体制も、顧客からの信頼獲得に繋がっています。さらに、近年はMicrophysiological systems(MPS)といった動物実験を代替する試験手法への受託も開始しており、時代の変化にも柔軟に対応する姿勢を示しています。TR事業におけるSMART技術を基盤とした経鼻投与製剤の開発力も、将来的な競争優位性となり得ます。これらの技術やパイプラインは、模倣が難しく、同業他社に対する参入障壁となり得ると考えられます。
リスク要因
当社グループが直面するリスクとしては、まずCRO事業における実験動物の安定調達に関するリスクが挙げられます。感染症の発生や、地政学リスク、原材料・エネルギー需給の逼迫による試薬・消耗品等の調達困難などが、試験計画の見直しやコスト増加に繋がる可能性があります。また、NHP以外の代替試験法の研究開発の進展により、NHPを用いた試験の優位性が低下するリスクも潜在的に存在します。TR事業においては、開発パイプラインの有効性・有用性が確認できず、研究開発が中止となるリスクや、被験者に健康被害が生じるリスク、開発品の商業化が計画通りに進まないリスクなどが挙げられます。これらは、多額の費用の回収不能や、期待した収益の実現時期の遅延に繋がる可能性があります。メディポリス事業では、景気動向や海外情勢、食品衛生事故、人財確保の難化などが、ホスピタリティ事業の稼働率低下やサービス品質の低下を招くリスクがあります。発電事業では、蒸気量の減衰や設備の故障、自然災害による影響が、発電量の減少や操業停止に繋がる可能性があります。これらのリスクは、事業継続性や収益性に影響を及ぼす可能性があります。
投資テーマとの関連
新日本科学は、医薬品開発支援という、ヘルスケア分野における重要な投資テーマに直接的に関連しています。特に、バイオ医薬品や再生医療、遺伝子治療といった先端医療分野の研究開発には、高度な非臨床・臨床試験のサポートが不可欠であり、同社のCRO事業はそのニーズに応えるものです。近年注目されているAI創薬の分野においても、AIを活用した最終報告書草案の自動作成など、DX推進による効率化を進めており、将来的なAI関連技術の活用拡大の可能性も秘めています。また、同社が開発を進める経鼻ワクチンや経鼻医薬品は、新しい投与経路による創薬モダリティとして、今後の感染症対策やQOL向上に貢献する可能性があり、これらの技術革新は、ヘルステックやバイオテクノロジーといった投資テーマとの親和性が高いと言えます。さらに、再生可能エネルギーである地熱発電事業は、ESG投資の観点からも注目される可能性があります。これらの事業活動は、中長期的な社会課題解決と企業価値向上に貢献するものと考えられます。