このテーマとは

不動産テック(PropTech)は、不動産取引・賃貸・管理・売買・査定・投資といった不動産関連業務をテクノロジーで効率化・透明化するSaaS・プラットフォーム・ITサービスの総称。具体的には、(1) 物件検索・マッチングプラットフォーム、(2) 電子契約・電子重説(重要事項説明)、(3) AI査定・価格予測、(4) 賃貸管理SaaS、(5) スマートロック・IoT、(6) 不動産投資クラウドファンディング、(7) 不動産データ分析、(8) 不動産デジタル資産(不動産STO)、を含む。

本テーマには、不動産テックSaaSベンダー、不動産プラットフォーム運営、不動産データプロバイダー、不動産投資クラウドファンディング事業者、不動産AI評価会社まで広く該当する。

なぜ注目されているのか

不動産業は、伝統的にアナログな業務プロセス(紙の契約書・対面重説・人手査定・台帳管理)が残り、生産性向上余地が極めて大きい。コロナ禍を契機にオンライン内見・電子契約のニーズが高まり、宅建業法改正(2022年5月から賃貸借契約の電子化全面解禁、2025年から売買契約も対象拡大)で電子化の制度的後押しが進んだ。

需要側の追い風は、(1) 不動産業界の人手不足対応、(2) 投資家の不動産投資意欲(新NISA・低金利・REIT人気)、(3) 賃貸管理の効率化ニーズ、(4) 海外からの日本不動産投資、(5) 価格透明性ニーズの高まり、と多層的。AI技術の進展で、画像認識による物件評価、自然言語処理による物件説明文生成、機械学習による価格予測など、新しい応用領域も拡大している。

また、不動産取引の高額・低頻度という性格から、不動産テックSaaSは1ユーザーあたりの売上単価(ARPU)を高く設定できる構造を持つ。賃貸仲介業者・賃貸管理業者・不動産デベロッパー・不動産投資家それぞれに対して、業務効率化と収益向上の両面でのメリットを訴求できる。

ただし、不動産業界全体としては中小規模事業者が多く、IT投資余力が限られる。SaaS導入が大手から進み、中小には導入が遅れる「二極化」が進んでいる。

関連する事業領域

含まれる業種は、情報・通信業(不動産テックSaaS・プラットフォーム)、不動産業(不動産仲介・管理・デベロッパー)、サービス業(不動産コンサル・データ分析)、その他金融業(不動産クラウドファンディング)など。

不動産テックのサブテーマとしては、(a) 物件検索・マッチング、(b) 電子契約・電子重説、(c) AI査定・価格予測、(d) 賃貸管理SaaS、(e) スマートロック・IoT、(f) 不動産投資クラウドファンディング、(g) 不動産STO(デジタル証券)、で市場規模・成長性が異なる。

財務的にどう評価するか

不動産テックSaaS企業の評価軸は、SaaSビジネスの一般的指標(ARR成長率・解約率・粗利率・LTV/CAC)に加え、(a) 不動産業者の導入率(市場浸透率)、(b) 1業者あたり利用機能数(クロスセル)、(c) 不動産取引件数連動収入の比率、を見る。

不動産マッチングプラットフォーム型企業では、(a) 月間利用者数、(b) 物件掲載数、(c) 成約件数・1件あたり手数料、(d) 営業利益率、を見る。プラットフォーム経済の特性として、ネットワーク効果(利用者・物件の蓄積)が競争優位を生む構造があり、上位プラットフォームへの集約が進む傾向にある。

不動産投資クラウドファンディング事業者は、(a) 募集案件数・成立金額、(b) 運用残高、(c) 運営手数料収入、(d) 元本確保型/劣後出資型の構造、を見る。投資家保護・信用リスク管理が事業継続の前提となるため、過去の元本毀損実績の有無も評価ポイントとなる。

落とし穴は、(1) 不動産取引件数連動収入の景気感応度、(2) 大手プラットフォームへの集約による中堅プレイヤーの劣後、(3) 不動産業界の中小規模事業者市場の開拓難航、(4) 法規制変更(個人情報・不動産関連法)への対応コスト、(5) 「不動産テック関連」と打ち出していても売上構成比が小さい、の5点。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) ビジネスモデル(SaaS/プラットフォーム/クラファン等)、(b) 売上成長率と営業利益率、(c) 主要顧客層(賃貸/売買/管理/投資)、(d) 不動産取引件数連動収入の比率、を確認したい。

関連テーマの不動産投資信託SaaSDXスマートシティフィンテック を併読すると、不動産産業のデジタル化と投資市場の動向が把握できる。