このテーマとは
車載半導体テーマは、自動車に搭載される半導体・関連部品全般を扱う。具体的には、(1) MCU(マイクロコントローラ)・SoC(System on Chip)、(2) パワー半導体(IGBT・SiC・GaN・MOSFET)、(3) アナログ・ミックスドシグナル IC、(4) センサ(イメージセンサ・LiDAR・レーダー IC・MEMS)、(5) メモリ(車載 DRAM・NAND)、(6) パッケージ・実装、(7) 関連の半導体製造装置・素材・テスト機器、までを含む。
自動車1台あたりの半導体搭載額は、内燃機関車では数百ドル規模だったものが、EV・自動運転対応車では1000-2000ドル超へと数倍に拡大している。SDV(Software Defined Vehicle)化で電子制御の比重がさらに高まる構造変化が進む。
なぜ注目されているのか
第一の追い風は EV 化と電動パワートレインの普及である。EV のインバータ・コンバータ・車載充電器(OBC)にはパワー半導体が大量に使われ、特に SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体は EV 走行距離・充電速度の改善で採用が拡大している。HV・PHEV を含むハイブリッド領域もパワー半導体需要を底支えする。
第二に、ADAS(先進運転支援システム)と自動運転の進化。前方カメラ・レーダー・LiDAR・周囲監視カメラ・コックピットモニタリングなどのセンサ群と、それを処理する高性能 SoC、機能安全対応 MCU の搭載が、運転支援機能の拡充に伴って急速に増えている。
第三に、SDV と E/E アーキテクチャの統合化。従来の分散型 ECU から、ゾーン ECU・セントラルコンピュート ECU の集約化アーキテクチャへの移行で、車両1台あたりの計算能力(CPU/GPU/NPU)が大きく増えている。OTA(Over The Air)アップデート対応も MCU の高機能化を促進する。
第四に、コックピットの高度化。大型ディスプレイ、HUD、車内モニタリング、車外通信(5G/V2X)、車載インフォテインメントの高度化で、車載 SoC・通信 IC・ディスプレイドライバ等の搭載数が増える。
逆風は自動車生産台数の景気変動と、パワー半導体の供給過剰懸念。2021-2022 年の半導体不足の反動で、各社が増産投資を進めた結果、特定品種では供給過剰が発生する局面がある。中国系半導体メーカーの台頭で、パワー半導体・MCU の汎用品市場で価格競争が激化していることも構造的な逆風になる。
関連する事業領域
含まれる業種は、電気機器(半導体メーカー・電子部品)、輸送用機器(自動車部品の一部)、化学(パッケージ材料・SiC ウエハ)、機械(半導体製造装置・テスタ)、ガラス・土石製品(基板・パッケージ材料)など。
「車載半導体銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) パワー半導体(電動化)と SoC・MCU(電子制御・自動運転)で需要ドライバが違う、(b) 同じパワー半導体でも Si・SiC・GaN で技術競争の構図が異なる、(c) 車載専業企業と、コンシューマ・産業向けと並行展開する企業で景気感応度の組み合わせが違う、という点。
財務的にどう評価するか
車載半導体テーマで最初に見たいのは、車載売上比率と地域別構成である。車載は他用途(コンシューマ・産業・通信)に比べて、品質要求が厳しく、認定取得に長期を要し、一度採用されると長期間ビジネスが続く特性がある。車載売上比率の高い企業は、景気サイクルの底でも下支えされやすい一方、自動車生産台数の急減局面では一気に減速する。
利益面では、車載専業の半導体企業は、研究開発費比率が15-20%と高く、設備投資負担も重い。営業利益率は好況期に20-25%、不況期に10%以下と振れ幅が大きい。SiC・パワー半導体ではウエハ供給能力(垂直統合の有無)が利益率の決定要因になる。
落とし穴は3つ。第一に、自動車サプライチェーンは在庫調整が二段階で起きる(半導体メーカー→Tier1→自動車メーカー)。半導体メーカー側の受注は実需より遅れて減速・回復するため、四半期業績の動きが本質的な需要変化と一致しないことがある。第二に、車載半導体は機能安全(ISO 26262)要求で開発リードタイムが長く、新規参入のハードルは高いが、一度負けると長期間挽回が難しい。第三に、SiC・GaN などの新材料はキャパシティ・歩留まり・原料調達の3点で計画通り立ち上がらない例が多く、計画値から下振れたときの株価インパクトが大きい。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) 車載売上比率と地域別売上構成、(b) パワー半導体/SoC・MCU/センサの製品ミックス、(c) 主要顧客(自動車メーカー・Tier1)の集中度、(d) 設備投資・研究開発費の規模と回収見通し、を最低限チェックしたい。
関連テーマの半導体・パワー半導体・自動運転・EV・自動車部品・5G と併読すると、車載半導体が単独テーマではなく、自動車の電動化・知能化・接続化を支える基盤層として位置づけられることが立体的に見える。