このテーマとは
半導体製造装置(SPE: Semiconductor Production Equipment)は、シリコンウェハ上に微細な電子回路を形成するための装置群を指す。前工程(ウェハ加工)と後工程(パッケージング・テスト)で大きく分かれ、前工程では(1)成膜(CVD/ALD)、(2)露光(リソグラフィ)、(3)エッチング、(4)洗浄、(5)平坦化(CMP)、(6)熱処理、(7)検査・計測、後工程では(8)ダイシング、(9)ボンディング、(10)モールディング、(11)テスタ、などの工程ごとに異なる装置メーカーが存在する。
世界市場は数兆円規模で、米Applied Materials・Lam Research、蘭ASML、日東京エレクトロン等が大手として競合する。日本は前工程の特定工程(コータ/デベロッパ、洗浄、エッチング、検査・計測)と後工程の多くで世界シェア上位を保持している。
なぜ注目されているのか
第一に、半導体投資の構造的拡大。AI・データセンター向け先端ロジック、HBM、車載半導体、IoT・産業用半導体が需要を押し上げ、ファウンドリ・メモリ各社のCAPEXは長期増加トレンドにある。TSMC・Samsung・Intelの先端ノード投資、Micron・SK hynixのHBM増産、ラピダス・TSMC熊本など日本国内の新工場立ち上げが、装置メーカーの受注を支えている。
第二に、経済安全保障に基づく国内製造基盤の再構築。米国のCHIPS法、EUのチップ法、日本の半導体・デジタル産業戦略補助金は、装置メーカーから見れば顧客の国内設備投資を直接押し上げる効果を持つ。北米・欧州・日本での新工場立ち上げが2020年代後半まで重なる。
第三に、後工程の重要性増大。チップレット・3D実装・先端パッケージ(CoWoS等)の普及で、後工程装置・検査装置への投資配分が増加した。HBM増産で関連するTSV・ボンディング装置への需要が急拡大している。
逆風はサイクル性と地政学。需要急減局面ではファウンドリ・メモリ稼働率が落ち装置受注が半減することがある(2022〜2023年のメモリ不況)。米中対立による先端装置の対中輸出規制(米のEAR、日本の改正外為法・経産省告示)は、対中売上比率の高い企業の収益を直撃しうる。
関連する事業領域
含まれる業種は、機械(前工程・後工程の本体装置)、電気機器(テスタ・電源・制御機器)、精密機器(計測・検査装置)、化学(特殊ガス供給装置周辺)など。装置メーカーの収益はOEMだけでなく、保守・部品・改造・アップグレードといったサービス収益(アフターマーケット)が長期で利益を支える。
「半導体製造装置銘柄」と括ると見落とすのは、(a) 同じ前工程装置でも成膜・露光・エッチング・洗浄で需要時期と顧客構成が異なる、(b) 先端ノード(5nm以下)特化型と汎用ノード型でサイクル振幅が違う、(c) 後工程・テスタ・検査は前工程と需要タイミングがずれる、という点。
財務的にどう評価するか
製造装置で最初に追いたいのは、受注高(または受注残)と book-to-bill 比率(受注÷売上)。装置は受注から売上計上まで数四半期〜1年のラグがあるため、受注残・book-to-billが先行指標として機能する。1超で需要拡大、1割れで縮小局面と読むのが基本。
棚卸資産回転日数も重要なシクリカル指標。需要逆転で棚卸資産が膨張し始めると業績悪化の前兆、回転短縮と受注増の同時進行は底打ちのサインと読める。粗利率はサイクル連動で大きく振れるため、過去サイクルでの最低・最高水準を把握しておくと相場観が安定する。
落とし穴は3つ。第一に、PERが20倍前後で割安に見えてもピーク利益基準のため実質40倍超になることがある(シクリカル株のPER罠)。第二に、対中売上比率は米国の対中規制強化で急減する可能性があり、地域別売上開示の確認が必須。第三に、為替感応度が高く、円高局面で輸出装置メーカーの利益率が大きく低下する。
CAPEX・R&D比率も見ておきたい。先端ノード装置は数年単位の長期開発投資が必要で、R&D比率が売上比10%超の企業も多い。研究開発費が膨らむ時期は短期利益が圧迫されるが、次サイクルでの競争力に直結するため、絶対額の継続性が評価ポイントになる。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) 受注高・受注残・book-to-bill の方向感、(b) 顧客(ファウンドリ・メモリ・ロジック・後工程)構成と地域別比率、(c) 棚卸資産回転日数とサービス収益比率、(d) R&D比率と先端ノード対応力、を最低限チェックしたい。
関連テーマの半導体・電子材料・車載半導体・パワー半導体・データセンター・AI を併読すると、需要セグメント別の温度差と装置サイクルの位置取りが見えやすくなる。