このテーマとは
脱炭素(カーボンニュートラル)は、温室効果ガス(GHG、主にCO2)の排出量と吸収量を均衡させ、実質排出量をゼロにする経済社会への移行を指す。日本は2050年カーボンニュートラルを2020年に宣言し、2030年度のGHG排出量を2013年度比46%削減する中間目標を掲げる。EU・米国・中国も同様の目標を持ち、世界的な経済政策の最重要課題の一つとなっている。
本テーマには、(1) 再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)、(2) 水素・アンモニア(クリーン燃料)、(3) 蓄電池・電力貯蔵、(4) 省エネ設備・建材、(5) CCS/CCUS(CO2回収・利用・貯留)、(6) 電動化(EV・船舶・航空)、(7) サーキュラーエコノミー・カーボンクレジット、(8) GX(グリーントランスフォーメーション)支援サービス、まで広く含まれる。
なぜ注目されているのか
脱炭素は、向こう数十年の経済社会の構造転換テーマであり、年間数兆〜数十兆円規模の投資が官民で動く。日本では、(1) 第7次エネルギー基本計画(2025年策定、再エネ40〜50%目標)、(2) GX推進法(2023年成立、20兆円規模のGX移行債発行)、(3) 改正温対法(GHG排出量算定報告公表制度の精緻化)、(4) カーボンプライシング(GX-ETS:排出量取引制度の段階的本格化、2026年度から多排出事業者の参加義務化)、(5) 燃料アンモニア・水素導入支援、と多層的な政策パッケージが展開している。
民間企業も、(1) Scope 1・2・3排出量の算定・開示・削減、(2) SBT(Science Based Targets)認定取得、(3) RE100(再エネ100%調達)、(4) 移行計画の開示(TCFD準拠)、(5) サプライチェーン排出量管理、を求められ、脱炭素関連投資が経営の必須項目となっている。
技術面では、(1) ペロブスカイト太陽電池、(2) 浮体式洋上風力、(3) 全固体電池、(4) グリーン水素(再エネ電力で水電解)、(5) ブルー水素(化石燃料+CCS)、(6) アンモニア混焼火力、(7) 原子力(次世代炉・革新軽水炉)、と幅広い技術が並行して開発・実証段階にあり、どれが「勝ち技術」になるかは中期的な観察が必要。
ただし、脱炭素関連事業の多くは政策・補助金依存度が高く、収益性が相対的に低い段階の技術も多い。短期的な投資収益を期待せず、中長期テーマとして捉える必要がある。
関連する事業領域
含まれる業種は、電気機器(再エネ機器・蓄電池・パワー半導体)、化学(電池材料・水素関連材料・カーボン素材)、機械(風車・タービン・水素関連機器)、建設業(再エネ発電所建設・断熱施工)、卸売業(電力・エネルギー商社)、サービス業(GX支援・カーボンクレジット仲介)、不動産業(再エネ用地)、運輸業(電動化)など。
脱炭素のサブテーマは、(a) 再生可能エネルギー、(b) 水素・アンモニア、(c) 蓄電池・電力貯蔵、(d) 省エネ・建築物高効率化、(e) CCS/CCUS、(f) 電動化、(g) サーキュラーエコノミー、(h) GX支援・カーボンクレジット、で技術成熟度・市場性が異なる。
財務的にどう評価するか
脱炭素関連企業の評価軸は、サブテーマ別に異なる。
(1) 再エネ発電事業者:自己資本比率・利息カバレッジ・残存契約年数(FIT/FIP)、(2) 設備メーカー:売上成長率・粗利率・受注残、(3) 水素関連:研究開発費比率・実証案件パイプライン・補助金依存度、(4) 蓄電池:原料価格感応度・出荷量・粗利率、(5) GX支援SaaS:ARR成長率・解約率、を見る。
落とし穴は、(1) 政策依存度が高く制度変更(補助金変更・規制変更)に業績が動く、(2) 実証実験どまりで本格的な収益化に至っていない技術もある、(3) 「脱炭素関連」と打ち出していても売上構成比が小さい、(4) 中国・欧米メーカーとの価格競争、(5) 化石燃料関連事業からの移行コスト負担(座礁資産化リスク)、の5点。中期計画で脱炭素関連事業の収益寄与時期を確認したい。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) 脱炭素関連事業の売上比率・利益貢献、(b) 主力技術の成熟度・市場ポジション、(c) 政策・補助金への依存度、(d) 中期計画での投資回収シナリオ、を確認したい。
関連テーマの再生可能エネルギー・水素・省エネ・蓄電池・環境技術・サーキュラーエコノミー を併読すると、脱炭素のバリューチェーン全体が見渡しやすい。