このテーマとは

ガステーマは、都市ガス(メタン主体)・LP ガス(プロパン・ブタン)・産業ガス(窒素・酸素・アルゴン・水素)・LNG 関連事業を横断的に扱う。具体的には、(1) 都市ガス事業(製造・導管・小売・卸)、(2) LP ガス事業(輸入・流通・小売・容器)、(3) 産業ガス事業(空気分離・水素・特殊ガス)、(4) LNG バリューチェーン(権益・輸送・受入・卸)、(5) ガス機器(給湯器・コージェネ・燃料電池)、(6) ガスを起点とした熱供給・地域熱供給、(7) 水素・アンモニア混合・転換、までを射程に入れる。

事業環境は、電力と同様に自由化(都市ガスは2017年小売自由化)の影響下にあり、大手と新規参入事業者の競争、電力と組み合わせたセット販売、原料費調整制度、が業績の鍵を握る。

なぜ注目されているのか

第一の追い風は、エネルギー転換期における「現実解」としてのガスの位置づけ強化である。脱炭素を進める中で、再エネの間欠性を補う火力発電の主役は LNG(天然ガス)に移っており、コージェネ・燃料電池・産業熱源としてのガス利用は当面継続的に必要な領域として位置づけられる。原子力再稼働の進行と並列して、ガスもベースロード・調整電源の重要な構成要素である。

第二に、水素・アンモニアへの転換投資。既存ガス導管・LNG 受入基地・港湾インフラを、水素・アンモニア・合成メタン(e-メタン)の流通網に転用・拡張する研究と投資が、ガス事業者を中心に進んでいる。e-メタンは既存導管・既存ガス機器を活かしつつ脱炭素を進める手段として注目されている。

第三に、産業ガス需要の拡大。半導体製造には超高純度の窒素・水素・アルゴン・特殊ガスが大量に使われ、半導体投資サイクルと連動する。EV 用電池工場、医薬品工場、データセンターでも産業ガス需要が増加し、産業ガス大手の売上を底支えしている。

第四に、LP ガス・都市ガスの一体運営と地域インフラとしての強み。地方部の LP ガス事業者は、住宅向けエネルギー供給の重要な担い手であると同時に、設備保守・住生活サービスのプラットフォームとしての性格を持つ。電力・通信・住設のクロスセル、地域コミュニティ事業との連携で多角化が進む。

逆風は LNG 市況の急変動と、ガス需要の長期的な減少懸念。世界的な LNG 需給は地政学情勢で大きく振れ、原料費調整制度のラグで一時的な利益変動が大きい。脱炭素化の長期トレンドでは、最終的にガス需要は減少方向にあり、ガス機器・ガス導管の長期収益力には不確実性が残る。

関連する事業領域

含まれる業種は、電気・ガス業(都市ガス・LP ガス事業者)、化学(産業ガス・特殊ガス)、卸売業(LP ガス販売・燃料商社)、機械(ガス機器・コージェネ)、建設業(導管・受入基地)、輸送用機器(LNG 船・LP 船)など。

「ガス銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 大手都市ガス・LP ガス事業者・産業ガス専業で収益構造・成長性・規制環境がまったく違う、(b) 同じ都市ガスでも、原料費調整制度の影響度合いと自由化エリアの競争状況で利益率が異なる、(c) 産業ガス事業は半導体投資サイクルとの連動性が強い、という点。

財務的にどう評価するか

ガステーマで最初に見たいのは、原料費調整制度・燃料スプレッドと販売数量の推移である。都市ガス大手では、四半期決算で原料費調整のタイムラグによる利益振れが大きく、調整後の経常的な利益水準を見る必要がある。LP ガスは LNG・原油市況との連動性が高く、輸入価格と販売価格のスプレッドが利益の中心要素になる。

利益指標としては、セグメント別営業利益(都市ガス/LP ガス/産業ガス/海外/その他)、設備投資の規模、有利子負債残高、を分解して見る。海外 LNG 権益・LNG 関連事業を持つ大手では、海外子会社の損益と為替影響が大きい。

落とし穴は3つ。第一に、原料費調整制度のラグで、市況急変動局面の業績は実態と乖離する。中長期の経常利益水準で評価する必要がある。第二に、ガス導管・LNG 受入基地などの大型インフラ投資は減価償却負担が長期にわたり、需要減少局面では設備の減損リスクが顕在化する。第三に、自由化下の競争で、新電力・新ガス事業者との顧客獲得競争が継続している。販管費の販促・営業強化が利益を圧迫する場面がある。

中長期では、水素・アンモニア・合成メタンへの転換投資、産業ガス事業の半導体投資との連動、海外 LNG 権益、地域インフラ事業の多角化、が事業価値の指標になる。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) セグメント別売上構成(都市ガス/LP/産業ガス/海外)、(b) 原料費調整制度の影響と調整後利益、(c) 設備投資・有利子負債の規模、(d) 水素・脱炭素関連の研究開発・投資、を最低限チェックしたい。

関連テーマのLNG電力脱炭素水素再生可能エネルギー と併読すると、ガスがエネルギー転換期の橋渡し役として、電力・水素・再エネと一体で動いている構造が立体的に見える。