このテーマとは

石油テーマは、原油の探鉱・生産から、輸送、精製、販売、までの石油バリューチェーン全般を扱う。具体的には、(1) 探鉱・開発・生産(上流)、(2) 原油タンカー輸送、(3) 製油所・精製(中流)、(4) ガソリン・灯油・軽油・重油・ジェット燃料・ナフサの卸・小売(下流)、(5) 潤滑油・特殊製品、(6) LPG(液化石油ガス)、(7) 石油化学原料(ナフサクラッカー連携)、までを射程に入れる。

事業環境は、原油市況、為替、需給バランス、地政学、各国エネルギー政策、脱炭素規制で形成される。日本は原油の99%以上を輸入に依存しており、為替・調達価格の変動が業績に直結する。

なぜ注目されているのか

第一の追い風は地政学リスクと中東・OPEC+ 産油国の生産政策による原油市況の高ボラティリティである。中東情勢、ロシア制裁、米シェール生産動向、OPEC+ 減産協議、為替動向で原油価格は構造的にボラタイルになっており、上流権益を持つ企業は高油価局面で大幅な利益を上げる。

第二に、製油所統廃合による国内需給の引き締まり。日本の石油需要は人口減・燃費改善・EV 化で構造的に減少傾向だが、製油所の統廃合・能力削減で国内需給バランスは一定の引き締まりを維持しており、精製マージンは局所的に拡大する局面もある。

第三に、脱炭素関連事業の拡大。石油元売各社は SAF(持続可能な航空燃料)、バイオ燃料、e-fuel、合成燃料、CCS(CO2 回収貯留)、水素・アンモニア、再エネ、地熱、と脱炭素関連事業に大規模投資を展開している。本業のキャッシュフローを再投資して脱炭素事業を育てる「移行戦略」が業界の主流である。

第四に、潤滑油・特殊製品・石油化学原料の安定需要。EV・産業機械向け高性能潤滑油、半導体・機能性化学向けナフサ系原料、特殊溶剤など、自動車燃料以外の用途は脱炭素影響を受けにくく、安定的な需要源となっている。

逆風は脱炭素移行と長期需要減少リスク。EV 化、断熱・省エネ、燃料転換で日本の石油需要は2050年に向けて構造的に減少が見込まれ、過剰能力・座礁資産化の懸念は中長期で拭えない。グローバルでも欧州・米国の脱炭素規制圧力は継続している。

関連する事業領域

含まれる業種は、石油・石炭製品(元売・精製)、卸売業(商社のエネルギー事業)、鉱業(上流権益・LNG・LPG)、化学(石油化学・潤滑油)、運輸(タンカー)、小売業(系列 SS)など。

「石油銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 元売(精製・販売)と上流権益保有企業(生産者)で原油市況への感応度が逆方向に動く局面がある(精製マージンと原油価格は必ずしも順相関でない)、(b) 国内事業と海外事業で需給見通しが大きく違う、(c) 脱炭素事業の規模と本業比率は企業によって差が大きい、という点。

財務的にどう評価するか

石油テーマで最初に見たいのは、上流(生産・権益)・中流(精製・物流)・下流(販売・小売)の構成比、原油市況・為替の感応度、在庫評価損益(時価会計の影響)、製油所稼働率、である。在庫評価は四半期業績を大きく振らせる要因で、本質的な事業利益と分離して見る必要がある。

利益指標としては、上流事業は油価感応度が直接的、精製事業はマージン(クラックスプレッド)と稼働率、下流事業は系列マージンと販売量を分解して見る。脱炭素関連投資(SAF・水素・再エネ)の規模と回収見通しも重要な評価軸になる。

落とし穴は3つ。第一に、原油価格・為替の急変動は四半期業績を大きく振らせるため、在庫評価損益を除いた実力ベースの利益を確認する必要がある。第二に、脱炭素事業は先行投資負担が重く、収益化までのラグが長い。「脱炭素ストーリー」と短期業績は乖離する。第三に、中長期需要減少を織り込んだ将来キャッシュフローで企業価値を評価する必要があり、過去の利益水準が継続する前提では割高判断になりやすい。

中長期では、上流権益の質と CO2 排出原単位、製油所統廃合・国内需給、脱炭素関連事業(SAF・水素・CCS)の規模化、株主還元の継続性、が事業価値の指標になる。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 上流・中流・下流の売上・利益構成、(b) 原油・為替感応度と在庫評価損益、(c) 脱炭素関連投資の規模と進捗、(d) 株主還元方針・配当性向、を最低限チェックしたい。

関連テーマのLNGガス再生可能エネルギー脱炭素水素 と併読すると、石油が単独商品ではなく、エネルギー転換の長い時間軸の中で本業キャッシュフローを再投資する移行戦略の主体として位置づけられる構造が立体的に見える。