このテーマとは

クラウドコンピューティングは、サーバー・ストレージ・データベース・ソフトウェアといったコンピューティングリソースをインターネット経由でオンデマンド提供するサービスモデル全般を指す。提供レイヤー別にIaaS(Infrastructure as a Service)・PaaS(Platform as a Service)・SaaS(Software as a Service)に分類される。

本テーマには、(1) パブリッククラウド事業者(国内ではAWS・Azure・GCPの再販パートナー、独自クラウドベンダー)、(2) クラウドインテグレーター(クラウド導入・移行支援)、(3) クラウド運用・保守サービス、(4) クラウド向けセキュリティベンダー、(5) クラウドを支えるデータセンター事業者、(6) ハイブリッド/プライベートクラウド構築事業者、まで広く該当する。

なぜ注目されているのか

クラウドは、ソフトウェア・データの基盤として現代のIT投資の中心に位置している。総務省・経産省も、政府情報システムの「ガバメントクラウド」採用方針を打ち出し、自治体・公共系のクラウド移行を加速させている。民間でも、オンプレミス(自社設備)からクラウドへの移行(リフト&シフト)が継続的に進み、新規システム構築では「クラウドネイティブ」が標準前提になった。

需要拡大の構造的な要因は、(1) 業務SaaSの普及、(2) 生成AIの計算リソース需要、(3) データ分析・機械学習の常態化、(4) 災害対策・BCP(事業継続計画)からの分散基盤需要、(5) 経済安全保障の観点でのデータ国内保管要求、と多層的。日本の国内クラウド市場規模は2024年時点で約7兆円超と推計され、年2桁成長が継続している。

経済安全保障の観点では、政府の重要情報やインフラ事業者のシステムを海外クラウドに委ねるリスクが議論され、国産クラウド基盤の整備や、ガバメントクラウドの認定要件として日本国内データ保管・運用が求められる場面が増えている。これは国内クラウドベンダー・データセンター事業者にとって追い風である。

ただし、クラウド事業者間の競争は熾烈で、IaaS・PaaSの価格は世界的にコモディティ化傾向。利益率を維持するには、付加価値の高いマネージドサービス・業界特化ソリューションの提供が必須になっている。

関連する事業領域

含まれる業種は、情報・通信業(クラウドインテグレーター・クラウドベンダー・クラウド運用)、電気機器(サーバー・ネットワーク機器)、サービス業(クラウド導入支援)、不動産業(データセンター)、卸売業(IT商社)など。

純粋なクラウド事業者だけでなく、(a) クラウド移行支援を本業とするインテグレーター、(b) クラウド上で動くSaaSベンダー、(c) クラウド向けセキュリティ・運用ツールベンダー、(d) データセンター運営事業者、と広範な周辺市場が存在する。

財務的にどう評価するか

クラウドベンダーを見るときは、(a) クラウド関連売上の構成比と成長率、(b) ストック収入(月額利用料・契約継続)の比率、(c) 営業利益率、(d) 顧客あたり売上(ARPU)の推移、を確認したい。クラウドインテグレーター型は、案件単発の売上比率が高いと業績がブレやすく、運用・保守の継続契約比率が高い企業が安定収益を持つ。

クラウド事業者の収益構造は、初期は設備投資先行で利益が薄く、顧客基盤拡大と稼働率上昇に伴い利益率が改善するスケールメリット型ビジネス。設備投資(CAPEX)が減価償却を上回る成長期にいる企業は、フリーキャッシュフローが圧迫される一方、中長期では利益率改善が見込める。

落とし穴は、(1) 「クラウド関連」と打ち出していても自社開発クラウドではなく単なるAWS/Azure再販で粗利が薄い、(2) 大手パブリッククラウドのコスト効率に対抗できず案件価格が削られる、(3) データセンターの電力コスト・冷却コスト上昇で運用利益率が圧迫される、の3点。事業セグメントとパートナーシップ構造を確認したい。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) クラウド関連売上の比率と成長率、(b) ストック売上比率、(c) 営業利益率の方向感、(d) パブリッククラウド再販なのか自社サービスなのか、を確認したい。

関連テーマのSaaSDXAIデータセンターサイバーセキュリティ を併読すると、クラウドを起点としたIT産業全体の構造が把握しやすい。