事業概要
株式会社TKCは、会計事務所向けおよび地方公共団体向けのシステム・サービスを提供する企業である。創業以来、「顧客への貢献」を経営理念に掲げ、会計事務所の職域防衛と運命打開、地方公共団体の行政効率向上を目的とした計算センター事業を基盤としてきた。現在では、これらの事業に加え、上場企業向けの連結納税システムやグループ通算申告システム、法律情報データベース「TKCローライブラリー」など、事業領域を拡大している。主要な収益源は、会計事務所向け会計システム「FXシリーズ」をはじめとするソフトウェア販売、クラウドサービス利用料、そして地方公共団体向けシステム導入・保守サービスである。同社は、TKC全国会との強固な連携を通じて、会計事務所の顧客である中小企業の「黒字決算と適正申告」の実現を支援するビジネスモデルを確立している。また、地方公共団体向けには、行政効率向上と住民サービス充実に資するITソリューションを提供し、DX推進を支援している。
直近決算ハイライト
2025年度(2024年10月1日~2025年9月30日)の連結決算において、株式会社TKCグループは堅調な業績を記録した。売上高は前期比11.0%増の834億76百万円、営業利益は同4.1%増の161億42百万円、経常利益は同3.5%増の165億90百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同7.3%増の120億94百万円となった。これは、連結グループとして12期連続で営業利益・経常利益、11期連続で親会社株主に帰属する当期純利益の最高益更新という快挙である。特に、会計事務所事業部門では、固定費削減が寄与し、売上高の伸びを上回る営業利益の増加を達成した。会計事務所事業部門の売上高は528億27百万円(前期比4.7%増)、営業利益は124億76百万円(同10.5%増)であった。地方公共団体事業部門も、システム標準化への対応や行政サービスのデジタル化支援を通じて、業績に貢献した。
強みと競争優位性
TKCの最大の強みは、約1万1,600名の税理士・公認会計士が組織するTKC全国会との強固な連携体制である。このネットワークを通じて、中小企業の「黒字決算と適正申告」という明確な経営目標達成を支援する独自のビジネスモデルを構築している。具体的には、「FXクラウドシリーズ」をはじめとする高機能な会計システムと、専門家による月次巡回監査や経営助言サービスを組み合わせることで、顧客の事業成長とコンプライアンス強化に貢献している。また、地方公共団体向け事業においても、地方公共団体情報システム標準化への早期対応やガバメントクラウド環境への移行支援など、行政DXの推進において中心的な役割を担っており、長年の実績と信頼が参入障壁となっている。さらに、法律情報データベース「TKCローライブラリー」は、業界最大級の判例収録数を誇り、法曹界やアカデミック市場で高い評価を得ており、この分野での競争優位性を確立している。
リスク要因
同社の事業運営におけるリスクとしては、まず会計事務所向け事業部門における市場環境の変化が挙げられる。少子高齢化に伴う会計事務所の後継者不足や職員採用難、顧客企業の廃業・倒産による市場縮小の可能性が示唆されている。また、地方公共団体向け事業においては、法制度改正に伴うシステム改修への迅速な対応が求められ、突発的な改正が続いた場合には開発リソース不足に陥るリスクがある。サイバーセキュリティ対策の強化とクラウドサービスの安定稼働も重要な課題であり、大規模災害や予期せぬ障害発生のリスクはゼロではない。印刷事業部門では、原材料調達費の変動、データセンター運営におけるエネルギー価格の変動が経営成績に影響を与える可能性がある。さらに、情報管理の徹底にもかかわらず、情報流出のリスクは常に存在し、社会的信用の低下や費用負担増につながる可能性がある。
投資テーマとの関連
TKCは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進という投資テーマと深く関連している。同社は、会計事務所および地方公共団体向けに、クラウドベースのシステム・サービスを提供し、業務効率化やDXの実現を支援している。特に、地方公共団体向け事業では、政府が進める「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」やシステム標準化に積極的に対応しており、行政サービスのデジタル化を加速させる役割を担っている。また、会計事務所向け事業においても、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応、ペポルインボイスの普及などを通じて、経理業務のデジタル化を推進している。生成AIの活用についても、宇都宮大学との共同研究やプログラミングにおける活用など、先進技術を取り込み、付加価値の高いシステム開発を目指しており、将来的なAI関連テーマへの貢献も期待される。