このテーマとは
インバウンドは、訪日外国人観光客による日本国内での消費(宿泊・飲食・交通・ショッピング・体験消費)と、それを取り込む産業を指す。コロナ禍前の2019年に訪日外国人数は約3,188万人、消費額は約4.8兆円のピークを記録、その後コロナ禍でほぼ消滅したが、2024年に水際措置撤廃と円安を追い風に過去最高の約3,687万人を達成した。
本テーマには、(1) ホテル・旅館・民泊事業者、(2) 百貨店・ドラッグストア・コンビニ・家電量販店といった訪日客向け小売、(3) 鉄道・航空・バス・タクシー、(4) 飲食・テーマパーク・観光施設、(5) 化粧品・アパレル・食品など訪日客に人気の商品メーカー、まで広く含まれる。
なぜ注目されているのか
政府は2030年に訪日外国人数6,000万人・消費額15兆円という目標を掲げており、観光立国の推進は中長期の成長戦略の柱として位置付けられている。地方創生の文脈でも、観光消費を地域に行き渡らせる「観光地域づくり」「DMO(観光地域づくり法人)」の整備が進んでいる。
円安は構造的にインバウンド需要を押し上げる。為替が円安基調にある間は、海外消費者にとって日本での宿泊・飲食・買い物が割安になり、訪日意欲・1人あたり消費額の双方を底上げする。富裕層向けの高級ホテル投資、ラグジュアリーブランドの旗艦店出店、地方の高級旅館へのファンド投資など、富裕層インバウンドへの注目も高い。
需要構造は変化している。中国人客中心の「爆買い」時代から、欧米・東南アジア・台湾・韓国など多国籍化が進み、消費内容も商品買物中心から体験型(食・温泉・自然・伝統文化・コンテンツツーリズム)へとシフトしている。アニメ・漫画・ゲーム聖地巡礼、日本酒・寿司体験、温泉宿泊、城・神社仏閣などコンテンツ・文化資源の経済価値化が進んでいる。
ただし、オーバーツーリズム(観光公害)の問題が表面化している都市・地域もあり、インフラ容量・住民との調和・宿泊税導入など、政策的な対応が必要な局面に入っている。
関連する事業領域
含まれる業種は、宿泊業(ホテル・旅館)、小売業(百貨店・ドラッグストア・家電量販店・コンビニ・コスメ)、空運業・陸運業(航空・鉄道・バス)、サービス業(旅行代理店・観光施設運営)、外食業(飲食チェーン・高級料理)、不動産業(観光向け物件開発)、化学(化粧品メーカー)など多岐にわたる。
「インバウンド銘柄」と打ち出す企業の中でも、訪日客売上比率はバラつきが大きい。百貨店では大都市基幹店で訪日売上比率20〜30%超もあるが、地方店では数%以下。ドラッグストアでも空港・観光地立地と郊外住宅地立地で訪日依存度が大きく違う。
財務的にどう評価するか
インバウンド関連企業を見る際は、(a) 訪日客売上比率(セグメント・店舗別開示)、(b) 既存店売上前年比、(c) 客数・客単価の分解、(d) 為替感応度、を確認したい。訪日客売上比率の高い企業ほど、訪日客数・為替・地政学リスクの感応度が大きく、業績ボラティリティが高い。
宿泊業ではADR(平均客室単価)・OCC(稼働率)・RevPAR(客室1室あたり売上)が業界共通指標。コロナ禍を経て国内客需要も含めた「ハイブリッド需要」を取り込めているか、客室単価が値上げできているかが収益力を分ける。
小売業では、訪日客比率の高い店舗の既存店成長率と、為替変動への感応度を見る。免税売上比率が高い企業は、訪日客数の急減(パンデミック・地政学リスク)で売上が一気に落ちるダウンサイドを意識したい。
落とし穴は、(1) 訪日客数のピークアウト懸念(2024年の高水準が中期で続くか)、(2) 円高反転による消費単価低下、(3) オーバーツーリズム規制による営業制約、(4) 地政学リスクによる特定国客の急減(過去の日韓関係悪化、コロナ禍中国客消失など)。中期計画の前提となる訪日客数・為替の水準を確認し、感応度を意識したい。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) 訪日客売上比率の方向感、(b) 既存店成長率と単価・客数の分解、(c) 為替感応度、(d) 地政学リスクへの分散度(特定国依存度)、を確認したい。
関連テーマのラグジュアリー・化粧品・外食・コンテンツ・アパレル を併読すると、訪日客の消費対象別の業界動向が把握できる。