このテーマとは

燃料電池テーマは、水素と酸素の電気化学反応で電力を取り出す発電装置と関連事業全般を扱う。具体的には、(1) 固体高分子形燃料電池(PEFC:FCV・定置用・小型)、(2) 固体酸化物形燃料電池(SOFC:定置用・産業用)、(3) リン酸形燃料電池(PAFC)・溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、(4) 燃料電池スタック・MEA(膜電極接合体)、(5) 触媒(白金・代替触媒)・電解質膜・セパレータ、(6) 水素タンク・水素ステーション関連、(7) FCV・燃料電池バス・トラック・船舶、(8) 家庭用燃料電池(エネファーム)、までを射程に入れる。

事業環境は、水素基本戦略、FCV・水素ステーション補助金、CO2 排出規制、再エネ電力からのグリーン水素戦略、で形成される。

なぜ注目されているのか

第一の追い風は商用車・船舶・航空での燃料電池需要の構造的拡大である。長距離トラック・バス、フォークリフト、船舶、航空機、で、バッテリー EV では達成困難な長距離・短充電時間を、燃料電池は経済的に提供できる。商用車向け FCV は欧州・米国でも導入が拡大しており、日本企業(トヨタ、日野、いすゞ)も商用 FCV を投入している。

第二に、定置用燃料電池の業務・産業用展開。データセンター・病院・工場・通信基地局のバックアップ電源・常用電源として、SOFC・PEFC の業務用発電が進む。停電耐性・低騒音・分散電源としての価値、再エネ余剰水素を使った発電も加わり、定置用市場が立ち上がっている。

第三に、家庭用燃料電池(エネファーム)の累積普及。日本では家庭用 PEFC・SOFC が累積40万台超まで普及しており、経済性・補助金縮小局面下でも継続的な販売がある。発電と給湯のコジェネとして、住宅の脱炭素・電力自給自足ニーズに合致する。

第四に、水素関連サプライチェーン構築の追い風。水素基本戦略、官民連携による水素ステーション整備、水素利用拡大法、水素・アンモニア発電の商用化、で水素経済全体が制度・インフラ整備されつつある。燃料電池はその出口需要の中核である。

逆風は水素供給コスト・価格と、バッテリー EV との競合である。水素の製造・輸送・貯蔵・供給コストは依然高く、水素価格が下がらないと燃料電池の経済性は限定的である。乗用車領域ではバッテリー EV に主役を奪われ、FCV 乗用車は構造的に苦戦している。

関連する事業領域

含まれる業種は、電気機器(燃料電池スタック・システム・制御機器)、化学(触媒・電解質膜・セパレータ・水素貯蔵材料)、機械(燃料電池発電装置・水素圧縮機)、輸送用機器(FCV・燃料電池バス・トラック・船舶)、ガラス・土石(電解質・耐熱材料)、非鉄金属(白金触媒・特殊金属)など。

「燃料電池銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 自動車向け(トヨタ・ホンダ等の自動車メーカー)と定置用(電機メーカー)と材料・部品メーカーで収益構造・成長性が違う、(b) 家庭用(成熟市場)と業務・産業用(成長期)と商用車(実証〜立ち上げ)で市場フェーズが大きく違う、(c) 大手企業の燃料電池事業は本業に対する売上比率が小さく、テーマ性と業績影響度が一致しない、という点。

財務的にどう評価するか

燃料電池テーマで最初に見たいのは、関連事業の売上規模と、用途別構成(自動車/定置用業務・産業/家庭用/商用車・船舶)、自社製品と部品・材料供給の比率、である。販売台数・容量(kW)の累計、長期 PPA・販売契約の有無、を基本指標として見る。

利益面では、規模化前は赤字事業が多く、自動車向け FCV は研究開発負担が継続的に重い。家庭用・業務用は補助金とのセットで利益化を図っている。材料・部品メーカーは下流の燃料電池事業の成否に依存しつつ、安定的な需要を取り込める。

落とし穴は3つ。第一に、テーマ性で先行買いされた銘柄が、FCV 販売の伸び悩みで大きく下落する例が多い。第二に、水素価格・供給インフラが整わないと、燃料電池の経済性は限定的で、事業拡大ペースは政策支援に依存する。第三に、バッテリー EV の急速な普及で、燃料電池の用途は商用車・定置用にシフトしており、乗用車向け事業の見直しが必要な局面である。

中長期では、商用車・船舶・航空での採用拡大、業務・産業用定置の規模化、水素価格の低下、触媒・電解質の低コスト化、海外展開、が事業価値の指標になる。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 燃料電池関連事業の売上規模と用途別構成、(b) 自動車/定置/家庭/商用車のどの位置取りか、(c) 自社製品と部品・材料供給の比率、(d) 水素サプライチェーンとの連携状況、を最低限チェックしたい。

関連テーマの水素EV蓄電池脱炭素再生可能エネルギー と併読すると、燃料電池が単独デバイスではなく、水素経済の中核出口需要として、商用車・産業用・分散電源を結ぶ位置にあることが立体的に見える。