このテーマとは

3Dプリンターテーマは、デジタルデータから材料を積層して三次元造形物を作る技術(積層造形・AM = Additive Manufacturing)を扱う。具体的には、(1) 樹脂 3Dプリンター(FDM・SLA・SLS)、(2) 金属 3Dプリンター(粉末床溶融・指向性エネルギー堆積)、(3) セラミック・砂型・複合材プリンター、(4) 専用材料(フィラメント・粉末・レジン)、(5) 後処理装置(熱処理・表面仕上げ)、(6) CAD/CAM ソフトウェア、(7) 受託造形サービス、までを射程に入れる。

用途は試作・治工具・スペアパーツ製造から、医療(インプラント・人工骨・歯科)、航空宇宙(軽量化部品)、自動車(金型・複雑形状部品)、建築(仮設構造物)、消費財・宝飾、までと多岐にわたる。

なぜ注目されているのか

第一の追い風は量産用途への拡大である。試作・治工具中心だった 3Dプリンターは、複雑形状・少量多品種・軽量化要求の強い分野で本格的な量産用途に進出している。航空宇宙のジェットエンジン部品、医療のカスタムインプラント、自動車のレース・高級車向け部品など、従来工法では困難な形状を経済合理的に実現する事例が増えた。

第二に、サプライチェーン強靭化・分散生産への期待。スペアパーツの長期保管に代わるオンデマンド造形、地理的に分散した拠点での現地造形、設計変更への迅速対応、により、サプライチェーン断絶リスクへの構造的解として注目されている。半導体・自動車部品の供給混乱を経験した産業ほど導入が進む。

第三に、医療・歯科分野での定着。CT・MRI 画像から患者個別のインプラント・人工骨・手術ガイド・歯科補綴物を造形する技術は、保険適用拡大とともに普及が進む。生体適合性材料の認可、4D プリンティング(時間軸で形状変化する造形)の研究なども進んでいる。

第四に、金属 3Dプリンター技術の高速化・大型化。レーザー多本同時走査による造形速度向上、造形可能サイズの大型化、後処理工程の自動化で、量産経済性が改善している。装置価格は依然高いが、対象部品価値が高い領域では投資回収が見えてきた。

逆風は造形速度・量産コスト・品質安定性で、伝統工法(鋳造・鍛造・切削)との比較で経済合理性が成立する用途は限定される。装置価格・材料費・後処理費を含めた総コストで競合工法との差別化要素を持つ部品でないと量産展開は難しい。

関連する事業領域

含まれる業種は、機械(3Dプリンター本体・後処理装置)、化学(造形材料・粉末・レジン)、電気機器(制御・レーザー・センサ)、ガラス・土石(セラミック粉末)、サービス業(受託造形)、情報・通信業(CAD/CAM)など。

「3Dプリンター銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 装置メーカーと材料メーカーで収益構造・利益率が違う(リカーリング材料は高利益率)、(b) 樹脂と金属で技術競争・市場規模・利益率が大きく異なる、(c) 大手企業の 3Dプリンター事業は本業に対する売上比率が小さく、テーマ性と業績影響度が一致しない、という点。

財務的にどう評価するか

3Dプリンターテーマで最初に見たいのは、関連事業の売上規模と、装置販売・材料販売・受託造形・サービスの構成比である。装置メーカーは設置台数の累積拡大により材料・サービスのリカーリング売上が伸びる構造で、設置ベースと材料消費量の関係が利益率を強く規定する。

利益面では、装置販売は粗利率が高めだが景気感応度が大きく、材料・後処理・保守の比率が高い企業ほど収益安定性が高い。研究開発費比率は10-15% と高く、技術投資負担は継続的に重い。

落とし穴は3つ。第一に、テーマ性で先行買いされた銘柄が、装置販売の伸び悩みで見直し売りに転じる例が多い。装置販売台数だけでなく材料消費量・契約顧客数の推移を見たい。第二に、特定用途・特定顧客への売上集中度が高い企業は、顧客の方針変更で業績が大きく振れる。第三に、北米・欧州メーカーが市場の主役で、日本企業のグローバル競争力は限定的な領域もある。海外売上比率と地域別利益率を分けて見る。

中長期では、量産用途への進出、医療・航空宇宙の長期契約獲得、材料・後処理を含む垂直統合度、ソフトウェア・データ管理事業の伸長、海外売上比率、が事業価値の指標になる。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 3Dプリンター関連事業の売上規模と用途別構成、(b) 装置・材料・サービスの構成比とリカーリング比率、(c) 樹脂・金属の技術ポジション、(d) 主要顧客(試作・量産・医療・航空)の集中度、を最低限チェックしたい。

関連テーマの工場自動化医療機器宇宙防衛機能性化学 と併読すると、3Dプリンターが単独装置ではなく、製造業の構造変化・サプライチェーン分散・カスタム医療を支える基盤技術として位置づけられる構造が立体的に見える。