事業概要
同社は、サイバーセキュリティ分野に特化した事業を展開しており、その収益の大部分をウイルス対策製品および関連サービスから得ています。デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現をビジョンに掲げ、増大し続けるサイバー脅威に対し、企業および個人向けの包括的なセキュリティソリューションを提供しています。主要な製品・サービスには、AIを活用した統合セキュリティプラットフォーム「Vision One」があり、これにより脅威の予測、侵入後の対策、および未知の脅威への対応まで、プロアクティブなリスク軽減を目指しています。SaaS型およびオンプレミス型のハイブリッド構成に対応し、多様化する顧客の利用環境や要件に応じた価値提供を推進しています。近年では、AI技術の進化や地政学的リスクの高まりを背景に、サイバー攻撃がより複雑化・広範囲化している状況に対応するため、個人向けソリューションの拡充や法人向け統合セキュリティ基盤の強化に注力しています。
直近決算ハイライト
2025年度の連結売上高は2,759億84百万円となり、前年同期比1.2%増と微増収となりました。地域別では、日本地域が878億40百万円(同2.4%増)、欧州地域が614億39百万円(同4.9%増)、アジア・パシフィック地域が715億16百万円(同2.9%増)といずれも増収を記録しました。特に、AI活用次世代SOC関連セキュリティが日本、欧州、アジア・パシフィック地域で大きく伸長し、法人向けビジネスを牽引しました。一方、アメリカズ地域は551億87百万円(同6.2%減)と減収でした。これは、米国の通商政策等に起因するセキュリティ投資抑制や政府機関の一時閉鎖の影響を受けたためです。費用面では、人件費や外注費を中心に抑制が進み、売上原価および販売費及び一般管理費の合計費用は2,182億7百万円(同2.8%減)と減少しました。その結果、営業利益は577億77百万円(同20.1%増)と大幅な増益を達成しました。親会社株主に帰属する当期純利益は345億23百万円(同0.5%増)と微増益に留まりましたが、これは持分変動利益の消失や退職給付費用の計上などが影響したためです。
強みと競争優位性
同社の強みは、サイバーセキュリティ分野に特化し、高度な技術力と専門知識を蓄積してきた点にあります。特にAI技術を活用したセキュリティ製品・サービスの開発・提供においては先行しており、統合セキュリティプラットフォーム「Vision One」は、AIによる脅威予測、侵入後の対策、そして広範囲にわたるサイバー攻撃への迅速かつ適切な対処を可能にしています。これにより、従来の防御中心の対策から、プロアクティブなリスク軽減へとシフトし、顧客のセキュリティ運用効率を大幅に向上させます。また、SaaS型とオンプレミス型のハイブリッド構成に対応することで、多様化する顧客のIT環境や要件に柔軟に対応できる点も強みです。急速に進化するサイバー脅威に対応するため、個人向けソリューションの拡充にも力を入れており、デジタルライフ全体の脅威に対応できる包括的なサービス提供を目指しています。これにより、法人・個人双方の顧客基盤を維持・拡大していくことが期待されます。
リスク要因
同社は単一の事業領域、すなわちサイバーセキュリティ事業に経営資源を集中しているため、この分野での競争激化や技術革新への対応遅れは、売上高やマーケットシェアの低下に直結するリスクとなります。サイバーセキュリティ業界は技術革新のスピードが速く、新たな脅威が次々と出現するため、製品やサービスの陳腐化リスクも常に存在します。また、ハードウェア製品の製造委託に伴うサプライチェーンリスクや、サイバー攻撃、情報漏洩、製品のバグ等による信頼失墜リスクも、事業運営上の重大な懸念事項です。中間販売業者への依存や、優秀な人材の確保・流出、AI活用に伴う電力消費量増加や人材獲得競争の激化なども、事業継続におけるリスク要因として挙げられます。さらに、為替変動や金融市場の変動、主要経営陣への依存、法規制の変更、顧客の購入キャンセルや製品の欠陥による訴訟リスク、知的財産権侵害のリスクなども、業績に影響を与える可能性があります。
投資テーマとの関連
同社は、AI(人工知能)技術をセキュリティ製品・サービスの中核に据え、その活用を積極的に推進している点で、AI関連の投資テーマと深く関連しています。AIを活用した脅威予測や検知・対応能力の向上は、サイバーセキュリティ分野における競争優位性の源泉となっています。また、デジタル化の進展に伴い、サイバー攻撃の高度化・巧妙化が進む中で、企業や個人が直面するセキュリティリスクは増大しており、同社の事業は、こうした社会的な要請に応えるものとして、サイバーセキュリティというテーマにおいて、その重要性を増しています。AI技術の進化は、攻撃者にとっても新たな手段を提供しますが、同時に防御側である同社にとっても、より高度なセキュリティソリューション開発の機会をもたらします。したがって、AI技術の進歩とサイバーセキュリティ需要の高まりは、同社の事業成長にとって追い風となると考えられます。