事業概要
当社の事業は、電子機器に不可欠な「コイル」とその応用部品の開発、製造、販売を核としています。コイルは電子回路の設計において最後に仕様が決まる受動部品であり、サイズや機能が毎回異なるため、基本的にはカスタム製品として提供されています。このカスタム対応を実現するために、「巻線技術」「表面処理技術」「成型技術」「精密加工技術」「素材・材料技術」「設計技術」「評価技術」「生産技術」という8つの要素技術を総称した「集合技術」を磨き上げ、顧客の多様な要望にワンストップで応える体制を構築しています。主要な顧客層は車載関連が約6割を占め、その他にインダストリー関連、家電関連市場にも製品を供給しています。創業以来、ラジオ部品から始まり、テレビ、PC、そして現在の車載分野(アンテナ、ABS、ヘッドランプ等)、インダストリー分野(太陽光・風力発電システム、産業ロボット等)へと、用途開発力も当社の強みとなっています。グローバル展開は1970年代から進めており、現在ではアジア、欧州、北米に各域内で設計・製造・販売を完結できる「地産地消」体制を構築しています。
直近決算ハイライト
2025年12月期において、当社は売上収益1,471億92百万円、前連結会計年度比2.2%増を達成しました。営業利益は74億39百万円と、同64.8%増と大幅な増加となりました。この利益増には、一部顧客との受注数量減少に対する補償金10億7百万円の計上や、前連結会計年度における構造改革費用の10億86百万円の一過性増益効果が含まれています。これら一過性要因を除くと、減収影響(37億93百万円減益)があったものの、操業度上昇による固定費負担減(22億81百万円増益)、製造間接費の減少(10億8百万円増益)、賃金影響(5億62百万円増益)などが営業利益を押し上げました。税引前当期利益は48億30百万円(同272.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は36億18百万円(同512.4%増)となりました。セグメント別では、アジア・パシフィック事業の売上収益が4.6%増、EU事業の売上収益が0.9%増となりました。市場別では、車載関連が2.8%減となったものの、インダストリー関連が8.3%増、家電関連が13.6%増と伸長しました。
強みと競争優位性
当社の最大の強みは、長年培ってきた8つの要素技術を統合した「集合技術」により、顧客の高度で多様なカスタム要求にワンストップで応えられる開発・製造力にあります。電子機器の根幹を支えるコイル部品は、その性質上、毎回仕様が異なるため、高度な技術力とノウハウが製品の競争力を左右します。特に、電動化・電装化が進む車載市場において、高耐電圧、小型化、高品質といった要求に応えられる技術力は、当社の優位性を確固たるものにしています。また、創業以来培ってきた用途開発力も特筆すべき点であり、顧客のニーズを先取りした提案が可能です。さらに、1970年代から進めてきたグローバル展開により、アジア、欧州、北米に設計・製造・販売を完結できる「地産地消」体制を構築しており、各地域市場のニーズに迅速かつ柔軟に対応できる体制は、参入障壁となっています。主要顧客との緊密な取引関係と、そこから生まれる継続的な引き合いも、安定した事業基盤を支える強みと言えます。
リスク要因
当社の事業運営におけるリスクとして、まず主要原材料である銅、鉄、原油等の国際市況変動が挙げられます。これらの価格高騰は、製品価格への転嫁が困難な場合、収益を圧迫する可能性があります。また、売上収益の約6割を占める車載事業への高依存度は、自動車市場の動向、特に各国政策や補助金の変更、電動化・電装化の進展に伴う技術革新や価格競争の激化といった環境変化の影響を受けやすい構造です。さらに、グローバルに生産拠点を展開していることから、米中経済摩擦をはじめとする地政学リスク、為替変動、大規模災害、サイバー攻撃などが事業継続や業績に影響を及ぼす可能性があります。品質問題が発生した場合、売上減少、市場シェア低下、ブランドイメージの毀損、さらには賠償請求につながるリスクも存在します。M&Aによるのれんの減損リスクも、将来的な業績に影響を与える可能性があります。
投資テーマとの関連
当社は、事業の成長ドライバーとして「メガトレンド」への対応を掲げており、特にグリーンエネルギー関連(xEV、自然エネルギー)や電力網、移送手段、データセンター、メディカル、ロボットといった分野への注力が、投資テーマとの関連性を高めています。xEV市場の拡大は、車載用コイルの需要増加に直結し、当社の主力事業であるコイル部品の成長機会となります。また、Schmidbauer社買収により強化された風力発電、太陽光、エネルギー貯蔵、鉄道、防衛といった産業分野向けの大型コイル製造能力は、再生可能エネルギーやインフラ投資といったテーマとの親和性が高いです。さらに、自社開発技術を応用した医療分野(VPコイル技術)や高度計測分野(量子センシング技術)への展開は、先端技術への投資テーマとも関連が深いです。これらのメガトレンドへの対応と、ニッチ市場でのトップポジション確立を目指す戦略は、中長期的な成長ストーリーを描く上で、投資家の関心を集める要因となるでしょう。