事業概要
株式会社T.S.I.(Terminalcare Support Institute)は、「愛ある日々のお手伝い」を経営理念に掲げ、高齢者向け住宅の設計・建築から運営までを一貫して手掛ける介護・不動産事業を展開しています。主要事業は、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の運営と、それに付随する訪問介護サービスです。連結子会社である株式会社北山住宅販売が、サ高住の建築を担い、親会社であるT.S.I.が介護運営会社として入居者へサービスを提供しています。顧客基盤は、要介護・要支援認定を受けている高齢者であり、彼らが安心して終末期まで暮らせる住環境と質の高い介護サービスの提供を目指しています。2025年12月末現在、36棟1,210室のサ高住を運営しており、平均稼働率は96.5%と高い水準を維持しています。また、近年では訪問看護事業所併設モデルを積極的に展開し、付加価値向上と収益源の分散を図っています。2025年12月末時点で4事業所を運営しており、今後も大型拠点では訪問看護併設での開設を進める方針です。
直近決算ハイライト
2025年12月期(当連結会計年度)の業績は、売上高が48億86百万円と、前年同期比3.8%の増加となりました。これは、新規開設した3棟(125室)の「アンジェス」シリーズが収益に寄与したことが主な要因です。しかし、新規拠点開設に伴う人件費や経費負担の増加、建築原価や人件費の高騰、不動産事業の減収などが響き、営業利益は40百万円(同73.0%減)、経常利益は1億38百万円(同27.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は81百万円(同34.6%減)といずれも前年同期比で減少しました。特に介護事業では、増収の一方でセグメント利益は21.3%減となり、新規拠点開設に伴う先行投資負担が利益を圧迫した形です。不動産事業は、売上高が同88.5%減と大幅に減少し、セグメント損失に転落しました。資産面では、固定資産が8億円増加し38億62百万円となった一方、負債面では長期借入金が13億60百万円増加し30億円となり、財務基盤の強化と事業拡大に向けた投資が進められています。
強みと競争優位性
T.S.I.の強みは、サービス付き高齢者向け住宅の設計・建築から運営までを一気通貫で提供できる体制にあります。連結子会社である株式会社北山住宅販売による建築能力と、自社での介護運営ノウハウを組み合わせることで、地域に根差したドミナント展開を効率的に進めることが可能です。また、自社開発のケア現場管理システム「CareMaster」を本格運用し、業務効率化と生産性向上を図っている点も競争優位性となります。さらに、新規拠点開設時には自社の営業部隊を投入し、紹介会社に頼らず自社で顧客を獲得する体制を構築しており、ケアマネージャーやソーシャルワーカーとの良好な関係構築にも注力しています。これにより、開設後1年以上経過した拠点の平均稼働率が96.5%という高い数値を達成しています。訪問看護事業との併設モデル展開も、収益性向上とサービス提供の付加価値を高める戦略として、他社との差別化要因となり得ます。
リスク要因
同社が抱える主要なリスクは、介護業界特有の人材確保の難しさにあります。有効求人倍率が高い状況下で、介護スタッフの待遇改善や研修制度の充実、採用チャネルの多様化(新卒・高卒採用、特定技能外国人材の活用)といった対策を講じていますが、人員不足が新規拠点の開設遅延や入居受け入れ停止に繋がる可能性は否定できません。また、介護報酬や診療報酬の改定リスクも常に存在します。2024年4月の改定では、処遇改善加算が拡充された一方で基本報酬が減額されるなど、一部事業に影響を及ぼす変更もありました。これらに対し、訪問看護事業の拡大による収益源の分散で対応していますが、将来的な大幅な報酬減額や新たな減算措置の導入は業績に影響を与える可能性があります。加えて、食中毒や感染症の発生、行政処分による事業継続への影響、競合他社の増加、自然災害、情報漏洩リスクなども懸念されます。
投資テーマとの関連
T.S.I.は、「高齢化社会」という長期的なメガトレンドに直接的に関連する企業です。高齢者人口の増加に伴い、介護サービスおよび高齢者向け住宅の需要は今後も堅調に拡大すると予測されます。特に、政府目標である高齢者向け住宅の供給割合の増加目標(2028年度までに4.0%)達成に向けて、同社のような供給側の企業は注目されます。また、同社が注力している訪問看護事業の拡大は、医療・介護連携の強化や在宅医療へのシフトといった、ヘルスケア分野における近年の投資テーマとも合致しています。自社開発システム「CareMaster」の運用や、訪問看護事業併設による付加価値向上は、テクノロジー活用やサービス高度化といったテーマとも関連性があります。ただし、AIや半導体、EV、防衛といった、より成長性の高いテーマとの直接的な関連性は薄いと言えます。