事業概要
同社は「Empower the Patients」を事業ミッションに掲げ、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)プラットフォームサービス事業およびデータポータビリティプラットフォームサービス事業を主軸に展開しています。主な顧客は製薬企業であり、疾患領域に特化したPHRプラットフォームサービスや、患者サポートプログラム(PSP)、臨床研究に必要なePRO(Patient Reported Outcome)データ収集ツールなどを提供しています。また、Welbyマイカルテサービスでは、患者と医療従事者間の情報共有、自治体・一般企業向けの生活習慣病重症化予防効果検証、保険者向けのPHRサービス事業などを展開しています。これらのサービスは、患者の健康状態や治療状況の把握、運動管理、健康維持、服薬管理などに活用され、医療機関、製薬企業、保険者、自治体など多様なステークホルダーに価値を提供しています。2025年12月末時点でのWelbyマイカルテ利用医療機関数は33,010施設、アプリ合計ダウンロード数は約123万回に達しており、PHR市場の創出と基盤確立を目指しています。
直近決算ハイライト
2025年12月期(通期)の業績は、売上高が前期比20.4%増の635,724千円となりました。これは、Welbyマイカルテサービスの売上計上やPHRプラットフォームの要件定義・開発などが寄与した結果です。しかし、疾患ソリューションサービスでは、受注未達や受注時期のずれにより、売上高が前期比17.3%減の337,282千円となりました。売上総利益は同18.1%増の448,667千円でしたが、販売費及び一般管理費は、業容拡大のための開発投資を行ったものの、費用対効果を踏まえた見直しにより、同12.8%減の901,495千円となりました。その結果、営業損失は452,827千円(前期は654,446千円の損失)、経常損失は454,737千円(前期は655,726千円の損失)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は、固定資産の減損損失計上などにより539,688千円(前期は804,603千円の損失)となりました。マイカルテやプラットフォーム開発などへの先行投資額は142,830千円でした。
強みと競争優位性
同社の強みは、PHRプラットフォームサービス事業における先行者利益と、患者中心の医療を実現するためのデータ基盤構築能力にあります。創業以来培ってきたPHRプラットフォームサービス事業におけるノウハウや、製薬企業との連携による疾患領域特化型サービスの提供能力は、参入障壁となっています。また、ISO27001およびISO27017認証の取得、GDPR等諸外国の個人情報保護法制への対応など、厳格な情報セキュリティ管理体制は、医療情報の取り扱いにおける信頼性を高めています。さらに、PHRサービス事業協会への参画や、日本生命保険相互会社、中部電力株式会社、株式会社スズケンといった有力企業との資本業務提携は、サービス普及と市場開拓において強力な推進力となります。WelbyマイカルテのフルリニューアルによるUI/UXの向上や、国際標準HL7 FHIRへの準拠、WPDP(Welby PHR & Data Portability Platform)の活用は、データ利活用基盤としての競争力をさらに強化しています。これらの取り組みにより、PHR市場におけるリーディングカンパニーとしての地位を確立しつつあります。
リスク要因
同社が抱えるリスクとして、まず医療・ヘルスケア市場の動向や、主要顧客である製薬企業の戦略変更・再編が業績に影響を与える可能性があります。競合他社による模倣や、資本力・マーケティング力のある企業の参入により、競争優位性が低下するリスクも存在します。また、収益の季節変動性、特に第4四半期に納品・検収が集中する傾向は、四半期業績の早期判断を困難にし、期ずれによる業績への影響も懸念されます。個人情報の取り扱いにおける法令変更や、情報漏洩、サービスに関する不具合・クレーム発生は、信用失墜や損害賠償請求につながる可能性があります。PHRプラットフォームサービス事業等への先行投資が想定通りの成果に繋がらない場合、業績に影響を及ぼすリスクも指摘されています。さらに、人材の確保・育成、PHR市場の創出および基盤確立の遅延も、事業拡大における課題となります。各種規制の見直しや、将来的に「医療機器プログラム」に該当する可能性も、事業運営上のリスクとなり得ます。
投資テーマとの関連
同社は「医療×デジタル」領域、特にPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)プラットフォームサービス事業を展開しており、ヘルスケアDXという投資テーマに直結しています。超高齢社会の到来や、国民の健康寿命延伸・Well-being向上への関心の高まりを背景に、PHRサービスの重要性は増しています。政府によるマイナポータルとの連携強化や、医療資源不足への対応としての遠隔モニタリング、地域住民の健康管理情報活用へのニーズの高まりは、同社事業の社会的な意義と成長可能性を示唆しています。製薬企業におけるDX推進や、新薬開発におけるePROデータ収集ツールの需要増加も、同社にとって追い風となります。また、データポータビリティプラットフォームは、医療データ活用基盤として、将来的なAI創薬や個別化医療の発展にも寄与する可能性を秘めており、広範なテーマとの関連が期待されます。