このスクリーニングが向いている人

長期保有を前提に、派手さはないが「自己資本で稼ぐ力」が強く、財務的に折れにくい企業を探している投資家向け。短期の値動きを取りに行く戦略ではなく、業績の積み上げと配当・自社株買いが株価を押し上げてくれることを期待する考え方。バフェットがしばしば語ってきた「素晴らしい会社をまずまずの価格で」という発想を、日本市場の上場企業にあてはめて機械的に絞り込むためのフィルタである。

スクリーニング条件

条件閾値意図
PER15倍未満期待先行で買われ過ぎていない水準
ROE15%以上自己資本を効率的に利益へ転換できている
自己資本比率50%以上不況時に資金繰りで詰みにくい財務
D/E ratio0.5以下借入レバレッジに頼らず利益を出している
営業利益プラス本業ベースで黒字(純利益の特益依存を排除)

PER15倍は東証プライム全体の長期中央値とほぼ同水準で、「市場平均並みの値付け」を意味する。ここから下なら期待が乗っていない。ROE15%は伊藤レポートが提唱した「最低限のROE目標8%」の倍近い水準で、明確に「平均より上」と言える稼ぐ力。自己資本比率50%とD/E0.5は、両者が組み合わさることで「借金で利益を膨らませているわけではない」ことを担保する。営業利益プラスを併用するのは、子会社売却益のような一過性の利益でROEを取り繕った企業を弾くため。

なぜこの組み合わせなのか

ROEだけを高い順に並べると、自己資本を意図的に薄くした企業が上位を占めてしまう。デュポン分解で見れば、ROEは「純利益率 × 資産回転率 × 財務レバレッジ」で、最後のレバレッジを上げれば数字は容易に大きくなる。しかしそれは負債依存度の上昇と裏返しで、不況局面では真っ先に毀損する種類の利益でもある。

そこで自己資本比率とD/Eで財務側にフィルタをかけ、レバレッジ効果ではなく「事業そのものの収益性」がROEを支えている企業だけを残す。さらにPERで「市場がまだ気付いていないか、地味として敬遠している」水準にあるものを抽出する。バフェットの一連の発言を機械的に翻訳するなら、おおむねこの形になる。

落とし穴・注意事項

①PER15倍未満は業種で意味が違う。 商社・銀行・自動車のような景気敏感セクターでは「平時の通常水準」が10倍近辺なので、PER12倍は割安ではなく適正。逆にハイテク・SaaS・製薬では市場が成長を織り込んで20倍超で取引されているため、15倍未満まで下がっている時点で何らかの懸念材料がある可能性が高い。業種ランキングと合わせて、同業他社のPER中央値との相対位置を必ず確認する。

②金融業(銀行・保険・証券)はこの条件では絞れない。 銀行の自己資本比率は構造的に5-10%程度、保険会社も20%前後で運営されている。50%以上という閾値は事業会社向けで、金融業は別の物差し(自己資本比率規制 BIS基準・ソルベンシー・マージン比率など)で評価する必要がある。本スクリーニングでは金融業を除外して見るのが安全。

③ROE15%が一過性かどうかを確認する。 直近1年だけ大型減損の反動で利益がジャンプしたケース、為替差益が偶発的に乗ったケースなど、翌期以降に再現性のないROEは多い。個別ページの9期分の推移で、ROE10%以上が3年以上続いているかを目視確認するのが必須。

④IFRS適用銘柄では一部BS項目が「非該当」表示になる。 本サイトはIFRS銘柄について investment_securities や bonds_payable などをIFRSが規定する分類にマッピングしているため、JGAAPと同じ項目名では値が入らない。スクリーニング対象(ROE/自己資本比率等)には影響しないが、個別ページで「データ欠損」と誤解しないように注意。

業種別の補正

該当銘柄を見つけた後のチェックポイント

  1. 9期分の業績推移: 売上・営業益・ROEがいずれも右肩で、リーマン・コロナのような外部ショック時に黒字を維持できていたか
  2. フリーキャッシュフロー: 利益が会計上のものでなく、現金として残っているか。FCF margin が安定して5%以上あれば優良
  3. 配当性向と自社株買い: 余剰利益を寝かせず、適切に株主還元しているか。ROE15%超で配当性向30-50%は健全
  4. 競争優位の源泉: 価格決定力・スイッチングコスト・規模の経済など、何が利益率を支えているのかを定性で確認
  5. 次の決算予想: ガイダンス対比でモメンタムが続いているか