このスクリーニングが向いている人
「ROEだけでは見抜けない、本物の資本効率」を測りたい上級バリュー投資家・クオリティ投資家向け。ROEは自己資本に対するリターンを測るが、財務レバレッジ(借金)を効かせれば人為的に高めることができる。一方、ROICは「株主資本+有利子負債」の合計(投下資本)に対するリターンを測るため、レバレッジを効かせても数字が変わらない。グリーンブラットがマジックフォーミュラで採用した EBIT/IC や、コカ・コーラを評価する際にバフェットが重視した指標として知られる。
スクリーニング条件
| 条件 | 閾値 | 意図 |
|---|---|---|
| ROIC | 15%以上 | WACC(資本コスト)の2倍以上の超過リターン |
| 営業利益率 | 10%以上 | 価格決定力・コスト優位の存在 |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 借入レバレッジに頼らない |
| 営業利益 | プラス | 黒字 |
ROIC 15% は、日本企業の WACC(加重平均資本コスト)が 5-7% と推定される中で、明確に「資本コストを上回るリターンを出している」と言える水準。8-10% でも超過リターンと言えるが、本スクリーニングは「クオリティの頂点」を狙うため厳しめに15%で設定。営業利益率10%の併用で、薄利多売型企業(小売・卸売・建設)が偶発的に高ROICになっているケースを除外。
なぜROIC(ROEではなく)なのか
ROEとROICの違いは、
- ROE = 純利益 ÷ 自己資本
- ROIC = NOPAT(税引後営業利益) ÷ 投下資本(自己資本+有利子負債)
ROEは「株主資本に対するリターン」だが、財務レバレッジ(借金)で増幅できる。例えば自己資本100億・有利子負債200億の企業が NOPAT 30億を稼いだ場合:
- ROIC = 30 / 300 = 10%
- ROE = 純利益(仮に20億)/ 自己資本100億 = 20%
ROEだけ見ると「優秀な企業」に見えるが、ROICで見ると「平凡な企業」。レバレッジが剥げた瞬間(金利上昇・借換難航)にROEも落ちる。ROIC 15% を維持できる企業は、レバレッジを使わず本業の収益力だけで高リターンを叩き出している、本物のクオリティ企業。
落とし穴・注意事項
①ROICの計算式の流派が多い。 投下資本の定義(運転資本含めるか、のれん含めるか)、NOPAT の計算(税率の取り方、特損の扱い)など複数の流派があり、媒体によって数値が異なる場合がある。本サイトの定義は「NOPAT = 営業利益 ×(1−実効税率)」「IC = 自己資本+有利子負債」のシンプル版。
②のれん大規模M&Aの影響。 大型M&Aで多額ののれんを計上した企業は、ICの分母にのれんが乗るためROICが圧縮される。「のれん控除前ROIC」と「のれん控除後ROIC」で数字が大きく異なる場合があり、買収戦略の妥当性を見るには両方を比較する必要がある。
③金融業はROICが算出対象外。 銀行・保険・証券は事業構造そのものが「他人資本(預金・保険料)を運用する」モデルで、ROIC の前提が成立しない。本スクリーニングでは事業会社のみを対象とすべき。
④単年のROICでは判定不十分。 特損で営業利益が縮んだ年は ROIC も連動して落ちる。直近5年で連続してROIC 12% 以上を維持できている銘柄を優先する。
⑤「儲かる事業を持っているだけ」と「規模拡大できる事業」の違い。 ROIC 15% でも事業規模が小さく拡大余地が乏しい企業(特殊薬品・ニッチ部品など)は、株式投資のリターンとして大きく伸びない。成長余地・TAM・海外展開の可能性を併せて見る必要がある。
業種別の特徴
- 電子部品・FA: キーエンス・SMC・ファナック・ダイキン等、ROIC 20-30% の常連
- 医薬品: 武田・第一三共などより、中外製薬・小野薬品など特許切れ前の企業
- 食品・トイレタリー: 花王・小林製薬・カゴメ・キッコーマンなど
- 化学(特殊化学・電子材料): 信越化学・JSR・住友ベークライトなど
- 建材・住設: TOTO・LIXIL等、ブランド力と寡占で高ROIC
該当銘柄を見つけた後のチェックポイント
- 過去5年のROIC推移: 安定して15%以上か、変動があるか
- WACCとのスプレッド: ROIC ÷ WACC が 2倍以上あれば超過リターンが大きい
- 競争優位の源泉: 技術・ブランド・スイッチングコスト・規模の経済のいずれか
- 再投資率: 高ROICでも再投資率が低いと利益総額が伸びない、配当性向と内部留保率を確認
- 海外展開・新規事業: TAM拡大の余地、新興国売上比率、既存事業の市場浸透率