このスクリーニングが向いている人
「価格決定力を持つ企業=モート(経済的な堀)を持つ企業」だけを集中して保有したい、バフェット流クオリティ投資のフィルタ。営業利益率は事業の質をもっとも端的に示す指標で、20% 超は日本市場全体の上位 5-10% にあたる。粗利率 40% 以上と組み合わせることで、薄利多売型(小売・卸売・建設)の偶発的な高営業利益率を排除し、本物の「製品差別化・ブランド力・寡占構造」を持つ企業に絞れる。
スクリーニング条件
| 条件 | 閾値 | 意図 |
|---|---|---|
| 営業利益率 | 20%以上 | 価格決定力の存在、市場全体上位5-10% |
| 粗利率 | 40%以上 | 原価競争力、製品差別化 |
| ROE | 10%以上 | 高利益率を資本効率にも反映できている |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 借入レバレッジに頼っていない |
東証プライム平均の営業利益率は 7-9% 程度。20% を維持できる企業は、何らかの構造的な差別化要因(ブランド、特許、ネットワーク効果、スイッチングコスト、規模の経済)を持っている。粗利率 40% は「原価が売上の60%以下」で、原料・人件費の市況変動に対する耐性も高い。
なぜ「営業利益率 × 粗利率」の併用なのか
営業利益率だけでは、
- 売上総利益率(粗利率)が低くても販管費を極端に抑えれば達成できる
- 一過性のコスト削減(人件費圧縮・広告費削減)でかさ上げできる
- 為替差益が販管費を打ち消した結果かもしれない
粗利率も併用することで、「原価ベースで競争優位がある」企業に絞れる。粗利率 40% 以上の企業は:
- 製品自体の差別化(ブランド・技術・ニッチ独占)
- BtoB特殊製品(スイッチングコスト高い)
- ソフトウェア・サブスク(限界コスト極小)
- 商標・著作権収益(ロイヤリティ収入)
といった構造的に強い事業を持つ。営業利益率 20% を粗利率 25% で達成している企業は、極端な販管費圧縮に依存しているため持続性が低い。粗利率 60% で営業利益率 20% を達成している企業は、販管費投資(R&D・営業・ブランド)の余地が大きく、成長余力もある。
落とし穴・注意事項
①競争激化で利益率は容易に剥落する。 高利益率は新規参入を呼び込むため、長期的には競争で削られるのが市場の常。10年前に営業利益率 25% だった企業が、現在 15% に落ちているケースは多い。直近5年の利益率推移を見て、安定維持・拡大トレンドにあるかを確認する。
②規模が小さい場合の偶発性。 売上 50-100億円規模の専門特殊事業は、たまたま競合が少ないだけで偶発的に利益率が高い場合がある。事業規模が拡大した時に利益率を維持できるかは別問題。TAM・市場浸透率・競合動向を確認。
③ソフトウェア・SaaSの会計特性。 SaaS企業は研究開発費を費用化するか資産化するかで営業利益率が大きく変わる。日本基準(JGAAP)と IFRS の差異もあるため、同業比較は会計基準を揃えて行う。
④BtoBで主力顧客集中の場合。 営業利益率 20% でも売上の50% を1社に依存している企業は、その顧客が値下げ要求を出した瞬間に利益率が崩壊する。有報の主要販売先開示で顧客集中度を確認。
⑤シクリカル業種の業績ピーク。 半導体製造装置・電子材料などは業績ピーク時に営業利益率 25-30% に達するが、サイクル底では 5-10% まで落ちる。本スクリーニングは「ピーク企業」を拾ってしまう傾向があるため、業界サイクル位置を別途確認。
業種別の特徴
- 電子部品・FA: キーエンス(営業利益率50%超)・SMC・ファナックなど代表業種
- 医薬品: 武田・第一三共・アステラスなど、特許保護下では高利益率
- 化学(特殊化学): 信越化学・JSR・住友ベークライトなど、ニッチ寡占
- 食品・トイレタリー: 花王・小林製薬・カゴメなど、ブランド力で高粗利率
- 半導体製造装置: 東京エレクトロン・ディスコなど、サイクル位置注意
該当銘柄を見つけた後のチェックポイント
- 過去10年の利益率推移: 安定維持・拡大トレンドにあるか、過去ピークから剥落中か
- モート(経済的な堀)の特定: 何が利益率を支えているのか、技術・ブランド・規模・ネットワーク効果
- R&D比率: 売上の5-10%以上をR&Dに投じているか、競争優位の維持投資
- 海外比率と為替感応度: 円安局面の利益率水増しに気づく
- 競合の動向: 大手が参入して利益率が削られるリスク