このテーマとは

鉄鋼テーマは、鉄を主原料とした金属素材産業全般を扱う。具体的には、(1) 高炉一貫製鉄(鉄鉱石・コークスから粗鋼を作る)、(2) 電炉(鉄スクラップを電気で溶解)、(3) 普通鋼(薄板・厚板・形鋼・棒線・鋼管)、(4) 特殊鋼(自動車・機械・工具用の合金鋼・ステンレス)、(5) 加工製品(メッキ鋼板・電磁鋼板)、(6) 商社・流通業者(鉄鋼商社)、(7) 関連の合金鉄・鉱石供給事業、までを射程に入れる。

業績は、鋼材需要(自動車・建設・産業機械・造船・エネルギー)、原料コスト(鉄鉱石・原料炭・スクラップ・電力)、輸入材との価格競争、為替、の組み合わせで決まる典型的な景気敏感型素材産業である。

なぜ注目されているのか

第一の追い風は、構造的な値上げ(マージン改善)と高付加価値シフトの定着。長らく「装置産業の宿命でマージンが薄い」と言われてきた鉄鋼業界では、過去数年でひも付き販売の値決め条件改善、高機能鋼板への構成シフト、安定供給責任を価格に反映する流れが進み、利益体質が大きく変わった。

第二に、脱炭素対応の構造変化。電炉化(スクラップ利用の拡大)、水素還元製鉄、CCUS の組み合わせで、製鉄プロセスそのものの脱炭素化が世界的な競争軸になっている。日本企業はグリーン鋼の認証販売、海外でのプロジェクト参画、研究開発で先行的な動きをしている。電炉化は粗鋼1tあたり CO2 排出量を大幅に削減できるが、電力コスト高では採算が振れる。

第三に、自動車電動化と特殊鋼需要。EV・HV のモーター用電磁鋼板、軽量高強度鋼板、駆動系特殊鋼など、付加価値の高い鋼材市場が拡大している。日本鉄鋼業の高品位品ラインナップは、グローバル自動車メーカーの調達先として強い競争力を維持している。

第四に、インフラ更新・防衛・エネルギー関連需要。橋梁・道路・港湾・水道管などインフラ老朽化更新、防衛装備品、洋上風力の基礎構造、LNG・水素関連設備など、長期的な鋼材需要の下支え要因が増えている。

逆風は中国の生産動向と輸出。中国の粗鋼生産量は世界の半分超を占め、不動産不況の局面では国内余剰分が輸出に流れ、国際市況を直接押し下げる。原料価格と販価のスプレッドは中国市況の影響から逃れられない。

関連する事業領域

含まれる業種は、鉄鋼(高炉・電炉・特殊鋼・鋼管メーカー)、機械(製鉄機器・圧延機器)、化学(耐火物・コークス・原料炭副生品)、卸売業(鉄鋼商社)、サービス業(建材加工・物流)、非鉄金属(合金原料)など。

「鉄鋼銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 高炉と電炉では原料コスト構造(鉄鉱石・コークス vs スクラップ・電力)と CO2 排出量・脱炭素戦略が違う、(b) 普通鋼と特殊鋼では景気感応度・利益率・競争構造が異なる、(c) ひも付き比率(自動車・造船など長期契約)と店売り比率(市況連動)の構成で、短期業績の安定性が変わる、という点。

財務的にどう評価するか

鉄鋼テーマで最初に見たいのは、トン当たりマージン(販価−原料費)と粗鋼生産量の組み合わせである。鉄鋼大手は四半期ごとに粗鋼生産量・販売数量・トン当たり販価を開示することが多く、数量と単価のミックスから本業利益の動きを推計できる。

利益指標としては、セグメント別営業利益(鉄鋼/エンジニアリング/システム等)と、為替・原料スワップ・在庫評価損益の影響を分解して見る必要がある。総合商社・鉱山事業を持つ大手では、上流(鉄鉱石・原料炭)の市況利益も織り込まれる。

落とし穴は3つ。第一に、装置産業の宿命で、設備の減損・特別損失が業績の大きな上振れ・下振れ要因になる。脱炭素対応の高炉廃止・電炉転換投資では、減損計上と再投資が同時に走る。第二に、有利子負債残高が大きい企業が多く、金利上昇局面で支払利息が利益を圧迫する。第三に、年金・退職給付債務が大きく、市況・為替・金利の変動で純資産がコア業績以上に振れる。

中長期では、グリーン鋼の認証・販売、特殊鋼・電磁鋼板等の高付加価値製品比率、海外事業の権益・出資、電炉化と水素還元の進捗、有利子負債削減、が事業価値の指標になる。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 普通鋼と特殊鋼の構成、(b) ひも付き/店売り比率、(c) 高炉/電炉構成と脱炭素投資計画、(d) 自己資本比率と有利子負債、を最低限チェックしたい。

関連テーマの脱炭素水素インフラ老朽化防衛自動車部品EV と併読すると、鉄鋼が単純な素材セクターではなく、脱炭素・電動化・安全保障の複数テーマで需要を作る位置にあることが見える。