このテーマとは

暗号資産テーマは、ビットコイン・イーサリアム等のパブリックブロックチェーン上で発行・流通する暗号資産(旧称:仮想通貨)に関わる事業全般を扱う。具体的には、(1) 暗号資産交換業(取引所・販売所・OTC)、(2) カストディ(保管・管理)、(3) マイニング(PoW チェーンの計算リソース提供)、(4) ステーキング(PoS チェーンのバリデータ運営)、(5) 暗号資産関連の決済・送金・カード、(6) 暗号資産投資ファンド・ETF(国によって)、(7) 暗号資産分析・コンプライアンスツール、までを射程に入れる。

国内では暗号資産交換業は資金決済法・金商法に基づく登録制で、金融庁・財務局の監督下にある。事業者数は限定的で、新規参入のハードルは高い。

なぜ注目されているのか

第一の追い風は、機関投資家市場の本格化である。米国でビットコイン現物 ETF・イーサリアム現物 ETF が承認・流通開始し、伝統金融が暗号資産にアクセスする経路が整備された。機関投資家・年金・大企業財務の暗号資産配分が議論される段階に入り、市場規模・流動性が構造的に拡大している。

第二に、国内制度整備の進展。資金決済法改正でステーブルコイン発行・取扱の制度が整い、金商法改正で電子的記録移転権利(セキュリティトークン)の取引枠組みが確立した。税制面でも、法人保有の暗号資産の期末時価評価課税の見直しなど、企業が暗号資産事業に参入しやすい環境整備が進む。

第三に、ステーブルコインの実用化。米ドル建てステーブルコインは決済・送金・取引の中で広く使われており、円建てステーブルコインも国内で発行例が出始めている。決済・国際送金・トークン化資産の決済通貨としての位置づけが固まりつつある。

第四に、Web3・DeFi・トークン化資産(RWA)の市場拡大。デジタル国債、不動産トークン、社債のトークン化など、伝統金融資産のオンチェーン化が進み、暗号資産インフラ事業者にとって新しい収益機会となる。

逆風は市場ボラティリティと規制リスク。暗号資産価格の変動は大きく、関連事業者の業績は強く市場サイクルに連動する。各国の規制動向(米国 SEC、EU MiCA、日本の追加規制等)で事業条件が変わるリスクは継続的にある。マネーロンダリング・テロ資金供与対策、消費者保護、システムセキュリティのコンプライアンスコストは増加傾向である。

関連する事業領域

含まれる業種は、情報・通信業(取引所システム・ウォレット・分析ツール)、銀行業(カストディ・ステーブルコイン発行)、証券業(暗号資産デリバティブ・トークン取引)、サービス業(コンサル・コンプライアンス)、電気機器(マイニングハードウェア)など。

「暗号資産銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 暗号資産交換業者(取引手数料収入主体)と、関連サービス(カストディ・ステーブルコイン)で収益性の安定度が違う、(b) 自社で暗号資産を保有する企業は会計処理・税務処理の影響を直接受ける、(c) 大手企業の暗号資産事業は本業に対する売上比率が小さく、テーマ性が業績影響度を上回る場合がある、という点。

財務的にどう評価するか

暗号資産テーマで最初に見たいのは、暗号資産関連事業の売上規模と、取引高・預かり資産の推移である。交換業者では、月次取引高・口座数・手数料率の組み合わせが業績の中心指標になる。市場サイクルにより四半期業績が大きく変動する前提で評価する必要がある。

利益面では、システム運用・コンプライアンス・人件費の固定費が高く、取引高変動に対する損益分岐点感応度が大きい。ホット・コールドウォレット運用、ハッキング対策、内部統制の高度化に継続投資が必要で、これが新規参入障壁にもなっている。

落とし穴は3つ。第一に、暗号資産価格の急騰局面で関連銘柄に資金が流入し、業績裏付け以上に株価が動く例が繰り返される。実態の手数料収入・継続収益で測ることが重要になる。第二に、自社保有暗号資産の評価方法は会計基準改正で変わってきており、評価益・損が当期業績に与える影響を理解する必要がある。第三に、ハッキング・運用失敗による顧客資産流出は事業継続に致命的で、過去にも複数の業者が破綻に至った。セキュリティ体制の質的評価は事業継続性の判断に欠かせない。

中長期では、機関投資家向けカストディ・取引基盤、ステーブルコイン事業、トークン化資産関連サービス、規制対応ライセンスの保有状況、が事業価値の指標になる。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 暗号資産関連事業の売上規模と現状損益、(b) 取引高・口座数・預かり資産の推移、(c) 自社保有暗号資産の規模と会計影響、(d) 規制ライセンスとセキュリティ体制、を最低限チェックしたい。

関連テーマのブロックチェーンフィンテックDX株主還元 と併読すると、暗号資産が単独投資対象ではなく、伝統金融とブロックチェーンの接合点として、決済・カストディ・トークン化の領域に拡張していることが立体的に見える。