このスクリーニングが向いている人
「PER一本で機械的にスクリーニングして、あとは個別に見極める」という古典的バリュー手法を採りたい投資家向け。割安優良株戦略がROE・財務でクオリティを担保しているのに対し、本スクリーニングは質を問わずに価格だけで切る。母集団は格段に広く、その中の1-2割に「市場が過剰に悲観している銘柄」が混じっている、という前提のフィルタ。グレアム的な「分散して買えば期待値プラス」の発想に近い。
スクリーニング条件
| 条件 | 閾値 | 意図 |
|---|---|---|
| PER | 8倍未満 | 市場平均の半分以下=かなり悲観された価格 |
| 営業利益 | プラス | 本業ベースで黒字 |
| 純利益 | プラス | EPS算出が成立する(PER < 0 を排除) |
| 自己資本比率 | 30%以上 | 倒産リスクで割安なだけの企業を除外 |
PER8倍は東証プライム長期中央値(13-15倍)の半分強で、「市場期待ゼロ」とまでは言わないが、相当悲観されている水準。営業利益と純利益の両方プラスを要求するのは、特益で純利益を取り繕った企業や、本業赤字を金融収支でカバーした企業を排除するため。自己資本比率30%は「いきなり倒産はしない」最低ライン。
なぜPER8倍以下なのか
実証研究では、PER下位20%(おおむねPER10倍以下)のポートフォリオを5-7年保有すると、市場平均をリスク調整後で年2-4%上回る傾向が報告されている(Fama-French、グリーンブラットなど)。ただしこの効果は「個別銘柄の当たり外れ」を平均化した結果で、単一銘柄での再現性は低い。本スクリーニングの使い道は「20-30銘柄を機械的に選定し、業種分散を取って分散保有する」のが王道。
8倍未満まで絞るのは、10倍だと該当社数が多すぎる(300-500社)一方、5倍未満では構造業種の常態(商社・銀行)に偏るため。8倍は該当社数が100-200社程度に絞られ、かつ業種が多様に残るバランス点。
落とし穴・注意事項
①バリュートラップ率が高い。 PER8倍未満銘柄のうち、5年後にPER15倍まで戻すケースは2-3割、5年経ってもPER8倍のまま停滞が4-5割、業績悪化でEPSが減って結局PERが跳ねるケースが2-3割。単一銘柄での当たり外れが激しいため、最低でも10銘柄以上に分散保有する前提で使う。
②シクリカル業種の「ピークアウトPER」に注意。 自動車・海運・鉄鋼・半導体のような景気敏感業種は、業績ピーク時にPERが最も低くなる(EPSが最大化されるから)。PER5倍で「割安」に見える瞬間が実はピーク手前で、翌年EPSが半分に減ってPER10倍に化けるパターンが頻発する。直近2-3年のEPS推移と業界サイクル位置を必ず確認する。
③一過性の特益でEPSが跳ねた銘柄。 子会社売却益・固定資産売却益・税効果会計の戻り入れなどでEPSが一時的に倍になると、PERは半分に見える。決算短信の「経常利益→当期純利益」の差分で特別損益の規模を確認、経常利益ベースのPERを別途計算するのが安全。
④外形だけ低PERの「中身が薄い企業」。 純利益のうち事業利益でなく金融収支・持分法投資損益が大半というケースもある。営業利益÷純利益が0.7未満なら本業以外のウエイトが大きいため、本業視点で見ると実質的なPERはもっと高い可能性がある。
⑤連結業績と単体業績の乖離。 親会社単体は赤字だが連結子会社の利益が大きく、連結EPSベースで黒字=低PER、というパターンがある。配当原資は単体利益に依存するため、低PERでも増配余力がない場合あり。
業種別の補正
- 総合商社・銀行・証券: PER8倍未満は常態。フィルタ効果なし
- 海運・鉄鋼・非鉄: シクリカル底値ではPER3-5倍も普通。ピークアウト警戒
- 建設・不動産: 受注残・販売用不動産の含み益で実質的に安いケースあり
- 新興市場・IT: 8倍未満はまず出ない。出ているなら何か悪材料を疑う
該当銘柄を見つけた後のチェックポイント
- 過去5年のEPS推移: 安定推移か、ピーク手前か。CAGR が +5% 以上なら持続性あり
- 特別損益の中身: 経常利益との乖離が大きい場合は実力EPSを再計算
- 業界サイクル位置: シクリカル業種なら BDI・LME・受注残などの先行指標を確認
- 配当性向と還元方針: 30-50%なら株主還元と内部留保のバランス良好
- 同業他社のPER中央値: 業種ランキングで相対位置を確認、業種要因の割安なら買う意味薄い