このテーマとは

5G テーマは、第5世代移動通信システムに関わる事業全般を扱う。具体的には、(1) 通信キャリア(基地局展開・コアネットワーク・周波数運用)、(2) 基地局装置・無線アンテナ・伝送装置、(3) スマートフォン・モバイルデバイスとその通信モジュール、(4) 5G 対応 SoC・モデム・RF 部品・MIMO アンテナ、(5) 光ファイバ・伝送網、(6) ローカル 5G・プライベート 5G を含む産業利用、(7) ネットワークスライシング・MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)、までを射程に入れる。

5G の特徴は高速大容量・超低遅延・多数同時接続の3点で、これによりコンシューマ用途(高品質動画・AR/VR)と産業用途(IoT・遠隔操作・自動運転)の両方への適用が想定される。次世代の 5G Advanced・6G へのロードマップも国際標準化団体で議論が進む。

なぜ注目されているのか

第一の追い風は、産業用途(ローカル 5G・プライベート 5G)の本格展開である。工場の自動化、物流現場の無線通信、港湾・空港・建設現場の遠隔操作、医療・教育の遠隔利用、放送・映像伝送など、特定エリアに閉じた高品質通信を必要とする用途で、5G・ローカル 5G の導入事例が積み上がっている。

第二に、Open RAN(オープン無線アクセスネットワーク)と仮想化の進展。基地局装置のソフトウェア化・マルチベンダー化で、従来の少数大手による寡占構造に変化が起きており、日本・北米・欧州の通信機器メーカー・ソフト企業が新規参入する余地が広がっている。これは経済安全保障の観点からも各国政府が推進している。

第三に、MEC・ネットワークスライシングによる新しいサービスモデル。基地局近傍にコンピューティング機能を配置し、用途別にネットワークを論理分割することで、低遅延・高セキュリティ・帯域保証のあるサービスを提供できる。これは BtoB・産業向けサービスの差別化要素になる。

第四に、5G 対応端末・部品の普及。スマートフォン・タブレット・PC の 5G 対応化、産業用 IoT 機器の 5G モジュール搭載、ルーター・モバイルホットスポットの普及で、ハードウェア層での 5G 関連売上が安定的に伸びている。

逆風はコンシューマ向け 5G の収益化の難しさである。5G 投資(基地局展開・コアネットワーク・周波数)に対し、コンシューマ向けの利用料単価アップは限定的で、通信キャリアの利益寄与は当初想定より弱かった。投資コストと収益のギャップは産業用途の取り込みで埋めるシナリオに依存している。

関連する事業領域

含まれる業種は、情報・通信業(通信キャリア・MVNO・SI・MEC 事業)、電気機器(基地局・端末・通信モジュール・半導体)、機械(建設・据付)、ガラス・土石(光ファイバ)、サービス業(ローカル 5G 構築支援)など。

「5G 銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 通信キャリア(投資負担を抱える側)と通信機器メーカー(5G 投資から売上を取る側)で短期業績インパクトが正反対に近い、(b) 同じ通信機器でも、基地局・コア装置・伝送装置・端末で需要時期と顧客が違う、(c) 産業利用ではローカル 5G の周波数・免許・運営の専門性が参入障壁になる、という点。

財務的にどう評価するか

5G テーマで最初に見たいのは、5G 投資・関連売上の規模と、それが各事業セグメントの利益にどう影響しているかである。通信キャリアの場合、設備投資負担が大きく、利益率は短期的に圧迫される一方、長期的には DX サービス・産業 5G の収益が積み上がるシナリオで評価される。通信機器メーカーは受注高・受注残が業績の先行指標になる。

利益指標としては、セグメント別営業利益、研究開発費比率、設備投資・減価償却の推移、海外売上構成、を分解して見る必要がある。海外通信キャリアの 5G 投資サイクルは国によって時期がずれるため、地域別売上構成は業績の波動を読むのに重要である。

落とし穴は3つ。第一に、5G 投資のピークアウト局面では、通信機器メーカーの受注が一気に減る。各国の 5G 商用化サイクルがずれるため、複数国に展開する企業ほど波動を平準化できる。第二に、Open RAN の進展で、従来型のクローズド基地局事業の競争環境が変わりつつある。レガシー資産の減損リスクは継続的に注視したい。第三に、コンシューマ向け 5G の単価アップは限定的で、通信キャリアの収益貢献は産業向けに依存する。産業向け実装件数・ARPU の開示を確認することが重要になる。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 5G 関連事業の売上比率と現状損益、(b) 通信キャリアか機器メーカーかサービス事業者かの位置づけ、(c) 海外売上構成と地域別 5G 投資サイクル、(d) 産業利用・ローカル 5G の事業実績、を最低限チェックしたい。

関連テーマの半導体データセンターIoT自動運転スマートシティ と併読すると、5G が単独通信規格ではなく、IoT・自動運転・産業 DX の通信基盤として、複数のテーマを支える層であることが立体的に見える。