このテーマとは

M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業の合併・買収を通じた事業ポートフォリオの組替・成長戦略の総称。M&A仲介・アドバイザリー、財務デューデリジェンス、PMI(買収後統合)支援、M&A SaaS(マッチングプラットフォーム)、PEファンドによる買収・売却、まで幅広く関わる産業。

本テーマには、(1) M&A仲介会社(中堅・中小企業のM&Aマッチング)、(2) 大手投資銀行・FA(フィナンシャルアドバイザー)、(3) PEファンド・ベンチャーキャピタル、(4) M&A関連SaaS・データベース、(5) M&A関連法務・会計・税務サービス、(6) M&Aを成長戦略に積極活用する事業会社、まで含まれる。

なぜ注目されているのか

日本のM&A市場は、年々件数・金額を伸ばし続けている。レコフM&Aデータベースによると、2024年のM&A件数は4,700件超で過去最高水準を更新中。市場拡大の構造的な要因は次の3つ。

(1) 後継者不在問題:日本の中小企業約340万社のうち、3分の2が経営者60歳以上で、約半数が後継者未定とされる。事業承継型M&Aは政策的にも後押しされ、中小企業庁の事業承継・引継ぎ補助金、M&A支援機関登録制度などが整備されている。

(2) 業界再編:人口減少・市場縮小局面では、規模の経済とコスト効率化を求めた業界再編が進む。地方銀行・薬局チェーン・物流・印刷・建設・人材サービス・食品など、再編候補が多い業種で件数が増えている。

(3) グローバル成長戦略:日本の上場企業による海外M&Aは、内需縮小を補完する成長手段として継続的に活発。コーポレートガバナンス・コードの改訂で「事業ポートフォリオの選択と集中」が経営課題化し、ノンコア事業の売却(カーブアウト)案件も増加している。

PEファンド(プライベートエクイティ)の活発化も無視できない。日本のPEファンドAUMは2010年代から急拡大し、中堅企業の買収を通じた経営改善・再上場・売却で投資収益を生むモデルが定着した。アクティビスト株主からの株主提案も、M&Aや事業売却を促す圧力として機能している。

関連する事業領域

含まれる業種は、サービス業(M&A仲介・コンサル)、その他金融業(PEファンド・投資会社)、証券(投資銀行・FA)、情報・通信業(M&Aプラットフォーム・SaaS)、専門サービス(弁護士・公認会計士・税理士)、業種横断(M&Aを多用する事業会社)など。

M&A仲介・アドバイザリー業は、(a) 中小M&A仲介(成功報酬型・地方中堅市場)、(b) 大企業向けFA(投資銀行型・大型案件)、(c) PEファンドアドバイザリー、(d) PMI支援、(e) M&Aプラットフォーム(SaaS型マッチング)、で収益構造が異なる。

財務的にどう評価するか

M&A仲介・アドバイザリー会社の評価軸は、(a) 売上構成(着手金・中間金・成功報酬の比率)、(b) 成約件数・1件あたり報酬、(c) 営業利益率(業界平均30〜45%と高水準)、(d) 営業人員数・1人あたり生産性、を見る。M&A仲介業は固定費(営業人員人件費)に対して粗利率が極めて高く、成約件数の増減で利益が大きく振れる。

PEファンド関連企業や投資会社では、(a) 運用資産残高(AUM)、(b) ファンド運営報酬・成功報酬収入、(c) 投資先評価益・実現益、を見る。投資先評価益は会計基準・市場評価で大きく変動するため、純利益のブレが大きい点に注意したい。

落とし穴は、(1) M&A仲介市場は競合参入で報酬料率の低下圧力、(2) 案件成約タイミングが四半期に集中するため業績ブレが大きい、(3) のれん減損リスク(PEファンド・事業会社双方)、(4) 中堅M&A仲介市場の倫理問題(高額報酬・利益相反)が規制強化を招くリスク、(5) マクロ環境(金利上昇・株式市況悪化)でM&A需要が冷え込む可能性。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 成約件数・受注高の方向感、(b) 営業利益率の中期推移、(c) 営業人員数と1人あたり生産性、(d) 主力顧客層(中小/中堅/大企業)と案件規模、を確認したい。

関連テーマの事業再編IPOフィンテックDX を併読すると、企業活動の組替に関わる市場全体が把握できる。