このスクリーニングが向いている人
「成長率の絶対水準より、業績の安定的な右肩上がりを重視したい」というモメンタム重視+低ボラティリティ志向の投資家向け。ハイパーグロースが「年30%成長」のスピード重視なのに対し、本スクリーニングは「年5-15%でも、それが3年連続で続いている」継続性重視。リンチがいう「ステディ・グロワー(着実な成長企業)」のカテゴリにあたる。市場全体が下げ局面でも、業績の堅調さで株価が支えられやすい。
スクリーニング条件
| 条件 | 閾値 | 意図 |
|---|---|---|
| 売上3年CAGR | 5%以上 | 名目GDP成長率を上回る持続成長 |
| 営業利益3年CAGR | 5%以上 | 利益も同等以上に伸びている |
| 売上成長率(直近) | プラス | 直近期も成長継続 |
| 営業利益成長率(直近) | プラス | 直近期の利益もプラス成長 |
| 純利益成長率(直近) | プラス | 純利益も伸びている |
| 自己資本比率 | 40%以上 | 財務健全 |
CAGR 5%は名目GDP成長率(2-3%)の約2倍で、「市場平均を上回る持続成長」のミニマムライン。3つの利益指標(売上・営業益・純益)すべてに直近期プラスを要求することで、「営業利益は伸びたが特損で純利益はマイナス」「売上は伸びたが営業利益は減った」というケースを排除している。
なぜ「すべての項目」を要求するのか
業績の質を見るとき、「売上」「営業利益」「純利益」の3つは見る場所が違う:
- 売上: トップライン、事業規模の拡大
- 営業利益: 本業の収益力、コスト管理の質
- 純利益: 株主に帰属する最終的な果実、特益・特損・税効果まで含む
このうち1つでもマイナスなら、何かしら不健全な兆候がある:
- 売上+、営業益−: 原価上昇に転嫁できていない、固定費が膨らんだ
- 売上+、営業益+、純利益−: 大型減損・訴訟費用・特損で純利益が削られた
- 売上−、営業益+: ダウンサイジングで利益率は上がったが事業は縮小
3つすべてプラスを要求することで「全方位で健全」な企業に絞れる。3年CAGRの併用で「単年だけ偶然プラス」の銘柄も除外できる。
落とし穴・注意事項
①「微増」も「増」のうち。 売上成長率0.5%、営業利益成長率1%でも条件は満たす。ただし、これは「成長企業」というより「停滞企業」に近い。直近の数字でなく3年・5年トレンドで意味のある成長ペースがあるかを別途確認する。
②高インフレ局面のかさ上げ。 2022-2024年の物価上昇局面では、価格転嫁による売上成長が一過性で発生した。実質ベース(物価上昇分を差し引いた)で見ると停滞している企業が、名目ベースでは成長企業に見える。インフレ収束後の本実力を見極める。
③M&A連結による見せかけの成長。 連続して中堅M&Aを実施している企業は、毎年連結範囲が広がるため売上・利益が機械的に伸びる。オーガニック成長率(既存事業の成長率)が別途開示されているかを確認する。
④3年連続の偶然性。 業績が3年連続で全項目プラスというのは、ある程度の確率で偶然成立する。本当に重要なのは、その背景に競争優位・市場拡大・経営戦略の有効性があるかという定性面。数字だけ見て買わない。
⑤PER水準の確認。 着実成長銘柄は市場でも「優等生」として認知されている場合が多く、PER25-40倍で取引されていることが少なくない。成長率が剥落した瞬間にPERも収縮する点はハイパーグロースと同じ。
業種別の特徴
- 食品・飲料・トイレタリー: 緩やかな数量成長+値上げで条件成立しやすい
- 医療機器・ヘルスケア: 高齢化追い風で構造的成長、優等生多数
- 電子部品・FA・産業機械: 製造業設備投資サイクルで好調期に該当
- SaaS・IT サービス: ARR の積み上げで売上が階段状に伸びる
- 専門小売(高機能アパレル・スポーツ等): 出店ペースで成長率が決まる
該当銘柄を見つけた後のチェックポイント
- 5年・10年の業績推移: 3年だけでなくより長期で見ても安定的に伸びているか
- オーガニック成長率の開示: M&A以外の自律成長部分の伸び
- 営業利益率の推移: 売上と利益が比例的に伸びているか、レバレッジが効いているか
- 業界の成長性: 業種そのものが構造的に伸びているか、衰退業種で個社だけ伸びているか
- PERと成長率の整合: PEG(PER ÷ 成長率%)で割安・割高を判定