このスクリーニングが向いている人
「企業の業績モメンタムに乗って、上昇相場の終わりまで持つ」CAN SLIM 流(ウィリアム・オニール)の成長モメンタム投資を採りたい中級投資家向け。本スクリーニングは「単に業績が伸びている」だけでなく「成長率が加速している(売上<営業利益<純利益の順に伸び率が上がっている)」状態を捉える。これは事業がスケールメリットに到達し、固定費を吸収しながら利益率が改善している証拠で、市場の評価が一気に切り上がりやすい局面。
スクリーニング条件
| 条件 | 閾値 | 意図 |
|---|---|---|
| 売上成長率(前期比) | 10%以上 | 市場平均超のトップライン拡大 |
| 営業利益成長率(前期比) | 20%以上 | 営業レバレッジが効き始めている |
| 純利益成長率(前期比) | 30%以上 | 利益が加速度的に拡大 |
| 営業利益 | プラス | 黒字 |
10%・20%・30% の階段状の成長率は「営業レバレッジが効いている」状態を示す。固定費(人件費・賃料・減価償却)が一定なので、売上が10%伸びると営業利益はそれ以上の率で伸びる。さらに純利益は金融収支・税効果なども加わり、もう一段大きく伸びる。この階段状のパターンが見える企業は、業績モメンタムが本物。
なぜ「成長率の階段」が重要なのか
成長率が「売上 < 営業利益 < 純利益」の階段になるのは、いくつかの好条件が重なった結果:
- 固定費の吸収進む: 人員・設備・広告費などの先行投資が売上拡大で薄まる
- 粗利率の改善: 規模拡大で原料調達コスト・生産効率が改善
- 販管費比率の低下: 売上に対する販管費の比率が下がる(営業レバレッジ)
- 金融費用の縮小: 借金返済による支払利息減
- 税効果: 過去の繰越欠損金活用で税負担が一時的に軽い
逆に、売上成長率 > 営業利益成長率の場合は「拡大コストが利益を圧迫している」状態で、本物の業績加速ではない。本スクリーニングは「拡大しながら利益率も上がる」企業に絞る。
落とし穴・注意事項
①一過性要因の見極め。 純利益成長率 30% 超は、特益・税効果・為替差益・持分法投資利益などで簡単に達成される。経常利益ベースの成長率も併せて確認し、本業の実力で達成できているかを見る。
②前期の業績悪化からの反動。 前期が業績悪化で利益が落ち込んだ企業は、翌期の成長率が機械的に大きくなる。これは「加速」ではなく「正常化」。直近5年のEPS推移で、上昇トレンドの一部としての加速なのか、底からの跳ね返りなのかを判別する。
③高PERでの買いタイミング難。 業績加速が市場に認知された銘柄は PER が高くなりやすい。PER 30-50 倍で買って、成長率剥落で PER 15-25 倍に圧縮されると、株価は半値になる。PEG ratio(PER ÷ 成長率)で 2 を超えていれば一旦警戒。
④「ピーク EPS で買う」リスク。 業績加速の最終段階で買うと、直後に成長率剥落・株価下落というシナリオが発生する。長期的な成長余地(TAM・市場浸透率・新規事業)を併せて確認し、加速がまだ初期〜中期段階にあるかを見極める。
⑤シクリカル業種の循環ピーク。 海運・鉄鋼・半導体・自動車のような景気敏感業種は、業績ピーク手前で「売上 < 営業利益 < 純利益」の階段が現れる。本スクリーニング該当銘柄でも、業界サイクル位置を必ず確認する。
業種別の特徴
- SaaS・FinTech: ARR 積み上げで階段成長が出やすい本命業種
- 半導体製造装置・電子材料: シクリカルだがピーク時に階段成長が顕著
- EC・サブスクリプション: 顧客 LTV 増加で利益率改善が続くフェーズ
- 専門小売(高単価帯): ブランド浸透で粗利率が伸びている局面
- 医療機器・ヘルスケア: 保険適用拡大で需要が階段状に伸びる
該当銘柄を見つけた後のチェックポイント
- 過去3年の四半期業績推移: 加速がいつから始まったか、何期続いているか
- 経常利益ベースの成長率: 本業ベースで階段成長しているか
- オーガニック成長率: M&A効果を除いた既存事業の伸び
- TAM・市場浸透率: 残り成長余地、加速継続の可能性
- PEG ratio: PER ÷ 成長率で割安・割高を判定