このスクリーニングが向いている人

「業績が悪化した企業を底値で拾い、回復過程の株価上昇を取る」逆張りバリュー戦略を採りたい中上級投資家向け。市場全体が悲観している銘柄に対して構造改革・市況改善・経営陣交代などの好材料が効き始めたタイミングで業績がV字回復することがあり、そこに乗れれば株価は2-3倍以上になる。一方、業績の上向きが一過性で再び失速する罠も多く、目利きが要求される。グレアム的には「市場の悲観が過剰な銘柄」、リンチ流には「ターンアラウンド」のカテゴリにあたる。

スクリーニング条件

条件閾値意図
純利益成長率(前期比)100%以上(2倍)大幅な利益回復モメンタム
営業利益成長率(前期比)30%以上本業ベースでも回復している
営業利益プラス直近で黒字化済み
純利益プラス純利益も黒字
自己資本比率20%以上倒産リスクが低い最低ライン

純利益成長率 100%(2倍)は、前期赤字・微益から大幅な黒字に転じた、もしくは前期低迷から急回復した状態を捉える。営業利益成長率 30% を併用することで、特益(売却益・税効果会計)だけで純利益が膨らんだケースを除外。自己資本比率 20% という低めの閾値は、ターンアラウンド銘柄の母集団に「財務体力が削られて低水準にある企業」が多いため、現実的なラインに合わせている。

なぜ「純利益2倍」を要求するのか

ターンアラウンドの本質は「市場が織り込んでいない好転」を捉えることにある。EPS が前期比 +20-30% 程度の改善だと、市場は概ね先回りで織り込んでおり、PER 修正による株価上昇余地は限定的。一方、EPS が前期比 +100% 以上のジャンプは、市場予想を超える業績モメンタムである可能性が高く、決算発表後にPER が再評価される動きが期待できる。

ただし、前期が異常な特損計上で利益が極端に低かった場合、翌期の純利益成長率は機械的に 100% を超える。本スクリーニングが拾うのは「数学的な見せかけ」を含むため、必ず前期業績の中身(特損理由・本業の落ち込み度合い)を確認する必要がある。

落とし穴・注意事項

①「真のターンアラウンド」と「特損戻り」の見分け。 前期に大型減損・訴訟損失・リストラ費用などの特別損失を計上した企業は、翌期にそれらが剥がれるだけで純利益が機械的に倍増する。これは「事業の本質的回復」ではなく「会計的な反動」。経常利益・営業利益ベースでも回復しているかが本物の判断材料。

②シクリカル業種の循環底からの回復。 海運・鉄鋼・半導体製造装置などは業績の循環が大きく、底から立ち上がる局面で純利益が倍増する。これは「個別企業の改善」ではなく「業界全体の波」。シクリカル要因なら次のサイクル底でまた利益が消える。業界平均と比較する。

③構造改革コミットメントの本気度。 経営陣交代・中期計画の刷新・事業再編といった構造改革を伴うターンアラウンドは持続性が高い。一方、「市況回復で業績改善」だけのケースは経営陣の能力ではなく外部要因に依存しており、市況反転で再び低迷する。

④財務的な余力の確認。 ターンアラウンド銘柄は自己資本比率が削られているケースが多い。条件で 20% 以上に絞っているが、それでも自己資本比率 20-30% 帯の企業は、もう一度業績悪化があると債務超過リスクがある。CF・流動比率・銀行借入余力を併せて見る。

⑤PERの過信に注意。 業績が回復した直後の銘柄は、PER が見かけ上低く見える(直近EPS が高水準)。ただしターンアラウンド企業は EPS の安定性が低く、市場は「平準化EPS」に近い水準を意識して株価を付けるため、PER が額面どおりには評価されない。

業種別の典型例

該当銘柄を見つけた後のチェックポイント

  1. 前期の特損理由: 数学的反動か、本質的悪化からの回復か
  2. 経営陣の変動: CEO・CFO・主要事業責任者の交代有無
  3. 中期計画の刷新: 新規戦略の発表、目標値の上方修正
  4. 本業ベース指標: 経常利益・営業利益・売上総利益が直近2-3年で改善トレンドにあるか
  5. 競合との相対業績: 業界平均より個社の改善が際立っているか