このテーマとは
蓄電池テーマは、二次電池(充放電可能な電池)とその関連事業を横断的に扱う。具体的には、(1) リチウムイオン電池(車載用・定置用・産業用・コンシューマ用)、(2) ニッケル水素・鉛蓄電池等の従来型電池、(3) 全固体電池・ナトリウムイオン電池・フロー電池等の次世代電池、(4) 正極材・負極材・電解液・セパレータ等の主要4部材、(5) リチウム・コバルト・ニッケル等の電池金属、(6) 電池製造装置(塗工・電極・組立・化成・検査)、(7) リサイクル・再資源化、までを射程に入れる。
蓄電池は EV 用車載電池が需要規模で最も大きい一方、再エネ統合のための系統用蓄電池、家庭用・業務用蓄電池、データセンター・通信機器のバックアップ電源など、用途が多岐にわたる。
なぜ注目されているのか
第一の追い風は EV 普及である。BEV・PHEV の台数増加に伴い、車載電池の需要は世界的に二桁成長を続けている。1台あたりの電池容量は車種・航続距離で50-100kWh と大きく、自動車1台の電池コストは車両価格の3-4割を占めることもある。
第二に、定置型蓄電池(系統用・産業用・家庭用)の急拡大。再エネ電源の変動を吸収する系統用蓄電池、デマンドレスポンスや自家消費最適化を行う産業用蓄電池、太陽光と組み合わせる家庭用蓄電池の市場が、欧米・中国・日本で拡大している。容量市場・需給調整市場での活用も進む。
第三に、政策面の支援。欧米では電池サプライチェーンの自国回帰のための補助金(米国 IRA、欧州 NZIA など)が大規模に投入され、日本も電池製造拠点・素材投資への支援を継続している。電池サプライチェーンは経済安全保障の重点領域として位置づけられる。
第四に、次世代電池の実用化前夜。全固体電池は車載用での試作・量産技術検証が進み、2020年代後半から30年代の本格搭載が議論されている。ナトリウムイオン電池はコスト面で定置用・低価格 EV 向けに採用が始まる。リチウム以外の選択肢が増えることで、原料制約のリスクが軽減される。
逆風は供給過剰と価格下落。中国メーカーの大規模増産で、特定容量・用途のセル価格は下落基調にあり、各社の利益率は厳しい競争状態にある。原材料(リチウム・ニッケル等)の価格変動も業績の振れを大きくする。電池工場の高額投資の回収には数年単位を要し、稼働率低下時の減損リスクが残る。
関連する事業領域
含まれる業種は、化学(正極・負極・電解液・セパレータ・原料)、電気機器(電池セル・電池パック・BMS)、機械(電池製造装置)、非鉄金属(リチウム・コバルト・ニッケル等)、サービス業(リサイクル)など。
「蓄電池銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 電池セル・パックメーカーと、素材メーカー・製造装置メーカーで利益率と景気感応度の構造が違う、(b) 同じ素材でも、日中韓のシェア構造と価格競争力の差が大きい、(c) 車載と定置用で顧客集中度・販売価格・利益率が異なる、という点。
財務的にどう評価するか
蓄電池テーマで最初に見たいのは、設備投資の規模と稼働率、そして主要顧客の集中度である。電池セル・素材・装置の各レイヤーで、過去数年の設備投資が大規模に積み上がっており、減価償却負担と稼働率の関係が利益率を強く規定する。主要顧客(自動車 OEM・電池メーカー)の調達計画と、それに対する自社の供給契約状況を確認したい。
利益面では、素材メーカーは原材料市況の影響を直接受け、価格上昇・下落局面で在庫評価損益・販売価格転嫁のラグで業績が振れる。装置メーカーは受注高・受注残の動きが先行指標になり、電池工場の新設・能増のサイクルと連動する。
落とし穴は3つ。第一に、電池サプライチェーンは中国・韓国の大手が巨大なシェアを持っており、日本企業はハイエンド・ニッチ部材で勝負することが多い。汎用品市場での価格下落リスクは構造的に大きい。第二に、車載電池用の長期供給契約は、原材料価格スライド条項の有無で利益安定性が大きく変わる。契約条件の開示は限定的なため、過去の利益率推移から読み取る必要がある。第三に、電池工場の建設コストは高騰傾向にあり、稼働遅延・歩留まり立ち上げ困難で減損計上に至る例が業界全体で増えている。
中長期では、次世代電池の研究開発と量産準備、リサイクル・再資源化事業の構築、定置用電池市場での顧客基盤、北米・欧州での現地生産能力、が成長性の指標になる。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) 蓄電池関連事業の売上構成と用途別比率(車載・定置・コンシューマ)、(b) 設備投資・減価償却・稼働率の関係、(c) 主要顧客の集中度と契約期間、(d) 次世代電池への研究開発投資、を最低限チェックしたい。
関連テーマのEV・電池材料・再生可能エネルギー・全固体電池・太陽光発電・電力 と併読すると、蓄電池が EV と電力の両方で需要を作る、エネルギー転換期の中核テーマであることが立体的に見える。