このテーマとは
VR/AR テーマは、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)・複合現実(MR)を含む、いわゆる XR(Extended Reality)領域の事業全般を扱う。具体的には、(1) HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のデバイス、(2) ディスプレイ・センサ・SoC 等のキーパーツ、(3) コンテンツ・ゲーム・教育・トレーニング、(4) 業務支援アプリ(製造現場の作業支援、医療画像の重畳表示、設計レビュー等)、(5) 配信・コミュニケーション基盤、(6) 開発ツール・SDK、までを射程に入れる。
VR は仮想空間に完全没入させる体験、AR は実空間にデジタル情報を重ねる体験、MR は両者の中間で実空間と仮想物体が相互作用する体験を指す。境界はデバイス・用途で曖昧で、まとめて XR と呼ばれることも多い。
なぜ注目されているのか
第一の追い風は、産業利用の本格化である。製造業の作業手順表示、設備保守の遠隔支援、医療現場の手術支援・教育、建築・土木の設計レビュー、物流現場のピッキング指示など、業務効率化と品質向上を目的とした BtoB 用途で、ROI が見える事例が積み上がってきた。BtoC 中心だったマーケットが BtoB 領域で成長軸を見つけつつある。
第二に、デバイスの世代交代。新世代の MR デバイスはディスプレイ解像度・パススルー画質・空間認識の精度が大きく向上し、VR と AR を一台で切り替えられる構成になった。Apple Vision Pro 投入と Meta Quest シリーズの普及で、開発者・コンテンツ事業者の参入が増えている。
第三に、コンテンツ・トレーニング・教育の応用拡大。安全教育、危険作業の事前訓練、医療シミュレーション、語学・職業訓練など、現実世界では再現が難しい状況を VR で代替する用途が拡大。教育・人材開発予算の確保で BtoB 売上が伸びやすい構造になっている。
第四に、メタバース文脈との接続。アバターを介した遠隔会議、バーチャルイベント、ライブ配信、スポーツ観戦など、デジタル空間でのコミュニケーション・体験消費が、コロナ禍以降の働き方・余暇の変化と相まって定着しつつある。
逆風はコンシューマー普及のペース。VR ヘッドセットの世帯普及率はゲーム機ほどには伸びておらず、コンテンツ単体での収益化(BtoC ゲーム単独)は黒字化に時間がかかる例が多い。装着感・酔い・コンテンツ不足は依然として課題として残る。
関連する事業領域
含まれる業種は、電気機器(HMD・ディスプレイ・センサ・SoC)、情報・通信業(コンテンツ・SaaS・配信)、サービス業(教育・トレーニング・イベント運営)、ゲーム業(VR/AR ゲーム)、化学(光学材料)など。
「VR/AR 銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) コンシューマー向け(ゲーム・エンタメ)と業務向けでビジネスサイクルがまったく違う、(b) デバイスメーカーは外資(Meta・Apple・Sony 等)が中心で、国内企業は部品・素材・コンテンツでの参入が多い、(c) 業務向け SaaS・受託開発は成長率が安定する一方、規模スケールでは BtoC ヒット作の方が大きい、という点。
財務的にどう評価するか
VR/AR テーマで最初に見たいのは、関連事業の売上規模と現状の収益性である。多くの企業ではセグメント開示の中の一部にとどまり、決算説明資料・適時開示・中期経営計画で個別言及されている情報を集める必要がある。BtoB 受託・SaaS では契約残高(ARR)と顧客社数の推移、BtoC ではタイトル数とアクティブユーザーが基本指標になる。
利益面では、デバイスの周辺部品・素材を提供する企業は、デバイス販売台数の伸びに連動するため、外資デバイスメーカーの新製品サイクルとシェアの組み合わせを見極める必要がある。コンテンツ・ゲーム企業はヒット依存で利益が振れやすく、サブスク・運営型タイトルへの移行度合いが安定性を規定する。
落とし穴は3つ。第一に、テーマ性で先行買いされやすく、デバイスの新製品発表・大型タイトルリリース直後に株価が動くが、実際の販売台数・利用時間が想定を下回る例が多い。第二に、業務向け VR/AR は契約獲得から本格導入までのリードタイムが長く、パイロット案件で終わるケースもある。第三に、メタバース・XR 関連の研究開発は減損対象になりやすく、長期化するプロジェクトでは過去にも特別損失計上の事例がある。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) VR/AR・XR 関連事業の売上規模と現状損益、(b) BtoC/BtoB 構成と用途別ポートフォリオ、(c) デバイスメーカーへの依存度(部品・コンテンツの場合)、(d) 研究開発費規模と回収見通し、を最低限チェックしたい。
関連テーマのメタバース・ゲーム・動画配信・半導体・5G と併読すると、VR/AR が独立技術ではなく、エンタメ・業務支援・通信インフラと結びついた応用層として動いていることが立体的に見える。