このテーマとは
地方銀行テーマは、地域経済を主な営業基盤とする銀行群を扱う。地方銀行は法的・実務的には、(1) 地方銀行(いわゆる第一地銀)、(2) 第二地方銀行、(3) ホールディングス傘下のグループ銀行、に区分されるが、投資テーマとしては、地域密着・中小企業向け融資・個人向け預金・有価証券運用、を共通項にする企業群として捉えるのが実務的である。
ビジネスモデルは、預金で資金を集め、貸出と有価証券で運用する典型的な間接金融。金利環境(短期・長期金利と利ザヤ)、地元経済の景気、有価証券ポートフォリオの含み損益、不良債権比率、自己資本比率、の5つが業績の主軸を作る。
なぜ注目されているのか
第一の追い風は、金利環境の正常化である。長期にわたる超低金利が見直されたことで、預貸金利ザヤの拡大、債券再投資の利回り改善、外貨運用の正常化など、銀行業全体の利益環境が構造的に変わった。地方銀行は預金基盤が厚く、利ザヤ拡大の恩恵を受けやすい層に位置している。
第二に、東証 PBR 改革の文脈である。地方銀行の多くは PBR1倍を大きく下回る状態が続いており、改善要請の対象として、自社株買い・配当性向引き上げ・政策保有株式の縮減・低収益事業の整理・経営統合検討、などの動きが連続している。
第三に、再編・統合の継続。県境を超えた経営統合、同一県内2行統合、ホールディングス化など、構造的な過剰銀行数を解消する動きが続いている。独占禁止法の特例(地域基盤行同士の統合審査)が整備され、再編のハードルが下がった。
第四に、本業の収益源多様化。投資信託・保険販売、法人ソリューション(ファンド・私募債・M&A 仲介)、地域商社、リース、人材紹介など、預貸利ザヤに依存しない収益源を伸ばす動きが各行で進む。フィンテック・地銀共通システム・クラウド勘定系といった IT 領域でも、コスト構造の見直しが続いている。
逆風は地方経済の人口減少・産業縮小という長期トレンド。地元中小企業の事業承継問題、後継者不在による廃業、若年層の流出は、貸出残高と取引先数の長期減少要因になる。有価証券運用の比重が高い銀行では、金利上昇局面で含み損が拡大する点もリスクとして残る。
関連する事業領域
このテーマの中心業種は銀行業に集中する。ただし、再編・統合の文脈ではフィナンシャルグループ持株会社、関連する事業領域として証券・リース・カード・人材・地域商社など子会社事業も視野に入る。
「地銀銘柄」と一括りにすると見落とすのは、(a) 同じ地銀でも預金量・貸出量・有価証券比率・自己資本比率に大きな幅があり、業態は同じでも財務体質はかなり異なる、(b) 県内シェアが高い「県盟主行」と、地域内2-3番手の銀行では、再編シナリオと収益性が違う、(c) 政策保有株式・有価証券ポートフォリオの含み損益で、純資産と PBR が大きく振れる、という点。
財務的にどう評価するか
地方銀行テーマで最初に見たいのは、純資産対比の有価証券含み損益と、預貸金利ザヤの推移である。有価証券含み損益はその他有価証券評価差額金として純資産に直接反映されるため、自己資本比率の年度比較で水準感を確認できる。利ザヤは「資金利益/総資産」や「貸出金利回り−預金利回り」の動きで、本業収益力の構造変化を捉える。
利益指標としては、業務純益(コア業務純益)と当期純利益の関係、有価証券関連損益と本業損益の分解が重要である。当期純利益が一見良くても、本業(貸出・役務)が薄く、有価証券売却益で底上げされている例も少なくない。
落とし穴は3つ。第一に、PBR が低くても、政策保有株式の縮減・含み損実現・退職給付の積み増し等で純資産が動くと、見かけ上の PBR 改善が起こる。本業利益による持続的な改善か、ワンタイムの数字合わせかを区別する必要がある。第二に、配当利回りは高いが、地域経済縮小と利ザヤ縮小で長期 EPS が逓減する銀行も多く、配当の持続性は地域経済と並走する。第三に、再編期待で先行買いされやすく、実際の統合発表時点では出尽くし反応になる例がある。
中長期では、貸出資産の質(不良債権比率・要管理債権・大口先集中)、自己資本比率(特に Tier1)、有価証券ポートフォリオのリスク量、人件費・物件費の構成、IT 投資負担、が銀行の「持続力」を測る指標になる。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) 預貸金利ザヤとコア業務純益の推移、(b) 有価証券ポートフォリオの含み損益と純資産影響、(c) 政策保有株式の残高と縮減方針、(d) PBR・自己資本比率・配当性向の関係、を最低限チェックしたい。
関連テーマの株主還元・PBR1倍割れ・事業再編・M&A・フィンテック と併読すると、地方銀行が単なる地域業種ではなく、資本効率改革と再編の主戦場の一つであることが立体的に把握できる。