このテーマとは

LNGテーマは、天然ガスを-162℃で液化して海上輸送する一連のバリューチェーンを対象とする。具体的には、(1) ガス田の権益保有・上流開発、(2) 液化プラント、(3) LNG船による輸送、(4) 受入基地(タンク・気化設備)、(5) パイプライン送ガス・都市ガス販売、(6) 火力発電向け燃料供給、(7) LNGトレーディング、までが含まれる。

日本は化石燃料を持たず、原子力比率が低下した2010年代以降、LNG輸入量で世界トップクラスを維持してきた。電力会社・都市ガス会社・総合商社の3者が日本のLNG調達の主軸を担い、長期契約と短期スポット契約を組み合わせた調達戦略が業績を左右する。

なぜ注目されているのか

第一に、LNGは脱炭素移行期の「現実的な橋渡し燃料」として位置付けが定まりつつある。石炭火力からの転換、再エネ変動の調整電源、産業用熱源としての置き換えで、長期的な需要は当面続くとの見方が強い。エネルギー基本計画でもLNG火力は2030年以降も一定比率を維持する想定。

第二に、世界のLNG市場が再編期に入っている。米国のシェールガス由来LNG輸出能力の急増、カタールの大規模増設、欧州のロシアパイプラインガス代替としてのLNGシフト、中国・インドの需要拡大が同時進行で、価格・調達ルート・契約構造の不確実性が高まった。日本企業にとっては、長期契約のリプライス、米国・中東・東南アジア新規プロジェクトへの参画、転売・トレーディング機会が経営課題になっている。

第三に、LNG船の建造ラッシュ。新規液化能力の立ち上がりに合わせ、世界のLNG船発注は2020年代前半に過去最高水準に達した。日本の造船・海運・舶用機器メーカーには受注機会が拡大している。

逆風としては、(1) アジアスポット価格(JKM)の急変動、(2) ESG投資家からの化石燃料投資忌避、(3) 水素・アンモニアなど次世代燃料への置き換え圧力、(4) 受入基地の老朽化更新負担、がある。長期契約・上流権益はパッセージプライス(油価リンク)と現物価格の乖離でも業績が振れる。

関連する事業領域

含まれる業種は、電気・ガス業(発電・都市ガス)、鉱業(ガス田権益)、卸売業(総合商社のLNGトレーディング)、海運業(LNG船オペレーション)、輸送用機器(LNG船・舶用エンジン)、機械(液化プラント・気化設備)など。

「LNG銘柄」と括ると見落とすのは、(a) 上流権益保有か中流(輸送・貯蔵)か下流(販売)かで景気感応度が大きく違う、(b) 同じ電力・ガス会社でも長期契約比率とスポット比率で利益のブレ幅が異なる、(c) 商社のLNG事業は持分法投資先での権益が多く、連結営業利益に表れない持分法損益への影響が大きい、という点。

財務的にどう評価するか

LNG関連で最初に見たい指標は、燃料費調整制度のラグ・スプレッド・在庫回転。電力・都市ガスは燃料費調整制度で原燃料コスト変動が販売価格にラグを伴って転嫁されるため、原燃料急騰局面では一時的に粗利が圧迫され、その後ラグ解消で取り戻すというパターンを取る。単年度業績だけでなく数年単位の平均利益水準を見ることが重要。

商社のLNG事業は、上流権益の評価と価格前提の感応度分析(注記の開示)を確認したい。原油価格・LNGスポット価格が一定水準を下回ると減損リスクが顕在化するため、過去の減損履歴と現在の前提価格を確認することが、隠れた損失リスク評価に直結する。LNG船保有事業者は、長期チャーター契約の残存年数と用船料水準が安定収益のベースになる。

落とし穴は3つ。第一に、円安局面ではLNG輸入企業の燃料調達コストが急増し、転嫁ラグの間に営業赤字に転落する例がある(2022年以降の電力大手の経験)。第二に、長期契約は価格固定ではなく多くが油価リンクのため、原油価格動向の影響を受ける。第三に、ESG文脈で化石燃料関連投資が忌避され、株価バリュエーションが構造的に低位にとどまる傾向がある。

該当銘柄の見方

該当社では、(a) 上流権益・中流・下流のどこに位置するか、(b) 長期契約とスポット比率、(c) 燃料費調整ラグの利益への影響度、(d) 過去の減損履歴と前提価格の保守性、を最低限チェックしたい。

関連テーマの電力ガス水素脱炭素再生可能エネルギー を併読すると、エネルギー転換期における橋渡し燃料としての位置付けと将来需要の見方が整理しやすい。