このテーマとは
人材派遣・人材サービスは、企業の労働力確保を支援する産業で、(1) 人材派遣(雇用契約は派遣会社、就業先は派遣先)、(2) 人材紹介(正社員・契約社員の紹介手数料モデル)、(3) 業務請負・アウトソーシング(業務単位の受託)、(4) 採用支援・求人広告、(5) 教育研修・リスキリング、を含む。
本テーマには、人材派遣・人材紹介の総合大手から、IT・エンジニア特化、医療・介護特化、製造業特化といった専門領域別の事業者、求人媒体運営者、採用支援SaaS、研修・リスキリング事業者まで広く該当する。
なぜ注目されているのか
日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年のピーク(約8,716万人)から減少を続け、2050年には約5,275万人まで縮小する見通し。人手不足は構造的な経営課題となり、派遣・紹介・業務請負・アウトソーシングといった「外部労働力の活用」需要が長期で拡大している。
法制度面では、(1) 同一労働同一賃金(2020年4月から派遣事業者も対象)、(2) 派遣法改正による直接雇用申込義務、(3) 副業・兼業の促進、(4) 高齢者雇用安定法(70歳までの就業機会確保)、(5) 改正育児介護休業法、と労働市場の流動化を促す制度整備が進んでいる。これに伴い、終身雇用・年功序列を前提としたメンバーシップ型からジョブ型雇用への転換が大企業で進み、中途採用市場・専門人材紹介市場が拡大している。
需要が伸びている領域として、(a) IT・デジタル人材(DX需要・エンジニア争奪戦)、(b) 医療・介護人材(高齢化)、(c) 製造業派遣(生産変動への柔軟対応)、(d) 高齢者・主婦・外国人労働者の雇用支援、が挙げられる。一方、コロナ禍で派遣需要が一時急減したように、景気後退時には製造派遣を中心に派遣単価・稼働率が落ちるシクリカルな性格も持つ。
最低賃金引き上げ・派遣単価上昇は、派遣会社にとって粗利改善要因にも、派遣先の派遣利用減退要因にもなる両面性がある。
関連する事業領域
含まれる業種は、サービス業(人材派遣・紹介・業務請負・採用支援)、情報・通信業(HR Tech SaaS・求人媒体)、教育(研修・リスキリング)など。
人材サービス事業者の中でも、(a) 一般事務・製造業向け派遣(労働集約・低粗利)、(b) IT・エンジニア派遣(高単価・高粗利)、(c) 医療・介護派遣(規制業界特性)、(d) 人材紹介(成功報酬型・高粗利)、(e) 業務請負・アウトソーシング(プロジェクト型)、で収益構造が大きく異なる。
財務的にどう評価するか
人材派遣・人材サービス企業の評価軸は、(a) 売上総利益率(派遣会社業界平均15〜25%、IT特化やエンジニア派遣は25%超もある)、(b) 営業利益率、(c) 派遣スタッフ稼働数・1人あたり売上単価、(d) 求人受注社数・成約率、を見る。粗利率の高さが事業構造の差を表し、IT・専門領域特化型は粗利率が高めに出る。
人材紹介事業(成功報酬型)は、成約数×紹介手数料で売上が立ち、伝統的に営業利益率15〜25%と高めの水準。一方、製造派遣・一般事務派遣は売上規模に対して営業利益率が薄く(3〜5%程度)、固定費吸収のために稼働率を高水準に維持する経営が必要になる。
落とし穴は、(1) 製造派遣を主力にする企業は景気後退時に稼働率急落で業績が大きくぶれる、(2) 同一労働同一賃金で派遣単価が上昇する一方、派遣先の値上げ転嫁が遅れると粗利が圧迫される、(3) 求人媒体・採用支援SaaSはAI・自動化で価格決定力が低下する可能性、の3点。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) 売上構成(派遣/紹介/請負/媒体の比率)、(b) 売上総利益率の中期推移、(c) 主力分野(IT/製造/医療など)と景気感応度、(d) 配当性向と株主還元方針、を確認したい。
関連テーマの[HR Tech](HR Tech)・DX・SaaS・リスキリング を併読すると、人材市場のデジタル化・労働市場改革の文脈が把握しやすい。