このテーマとは
EV(Electric Vehicle)は、ガソリン・ディーゼルといった内燃機関を持たず、電池に蓄えた電力でモーター駆動する自動車を指す。狭義にはBEV(バッテリー式EV)を意味し、広義にはPHEV(プラグインハイブリッド)・FCEV(燃料電池車)まで含む電動車全般を指すこともある。
本テーマには、(1) EV車両を製造する完成車メーカー、(2) 駆動用電池・モーター・インバーター・電池冷却系といったEV固有部品メーカー、(3) パワー半導体・車載半導体メーカー、(4) 充電器・充電ネットワーク事業者、(5) 電池リサイクル・リチウム等の資源確保まで含まれる。
なぜ注目されているのか
各国の脱炭素政策とEV購入インセンティブが、EV市場の急拡大を後押ししている。EUは2035年までに新車販売をゼロエミッション車のみに限定する方針、中国は新エネルギー車(NEV)クレジット制度で実質的にEV比率を引き上げ、米国はインフレ抑制法(IRA)でEV購入税額控除を強化している。日本もBEV購入補助金とFCEV補助金を継続し、2035年までに乗用車新車販売の100%を電動車(HEV含む)にする目標を掲げる。
EV普及の構造的な意味は、(1) 燃料・部品サプライチェーンの再編(エンジン関連部品需要の縮小と電池・モーター需要の拡大)、(2) 電力需要の増加(充電負荷)と再エネとの連携、(3) ソフトウェア定義車両(SDV)化への布石、と幅広い。日本の自動車部品サプライチェーンは世界的にも厚く、構造変化に対応した企業は新市場を獲得し、対応が遅れた企業は売上縮小に直面する明暗が分かれやすい。
ただし、足元では世界的にEV販売の伸びが鈍化している。2024〜2025年は中国を除く市場で価格・充電インフラ・残価リスク懸念から成長率が想定を下回り、HEV(ハイブリッド)の見直し買いも広がっている。EVテーマは構造変化が長期で進む一方、短期的にはサイクル変動を受けやすい点を意識したい。
関連する事業領域
含まれる業種は、輸送用機器(完成車メーカー・EV部品Tier1)、電気機器(モーター・インバーター・パワー半導体)、化学(電池正極材・負極材・電解液・セパレーター)、機械(電池製造装置・駆動部品加工機)、非鉄金属(リチウム・ニッケル・コバルト)、卸売業(電池・部材商社)など。
EVテーマの広がりは、車両完成車だけでなく、上流の電池材料・電池製造装置・電池リサイクル、下流の充電インフラ・電力需給管理(V2G)まで及ぶ。各段階で参入障壁・利益率・需給バランスが異なるため、サブテーマごとの選別が必要。
財務的にどう評価するか
EV関連の完成車・部品メーカーでは、(a) EV関連売上の構成比(セグメント開示)、(b) 受注残・新規プラットフォーム獲得状況、(c) 設備投資(CAPEX)/減価償却の比率、(d) 営業利益率の方向感、を見る。EV移行期はCAPEXが膨らみ短期利益が圧迫されるため、フリーキャッシュフローと有利子負債推移の確認も重要になる。
電池材料・電池メーカーでは、出荷量(GWh)・粗利率・原料価格との連動性を見る。リチウム・ニッケル価格の変動が粗利率に直接影響するため、原料価格コミット契約の比率や為替ヘッジ状況も影響する。中国勢の価格競争が激しいため、技術差別化(高ニッケル正極・全固体電池ロードマップ等)の有無が中長期評価を左右する。
落とし穴は、(1) PER期待先行で評価倍率が高すぎる、(2) ICE依存度の高い企業がEVテーマで反応高するも実態は移行できていない、(3) 政策インセンティブ剥落でEV販売が想定を下回るリスク。中期計画の前提(補助金・販売台数)への感応度を確認したい。
該当銘柄の見方
該当社では、(a) EV関連売上比率の方向感、(b) 受注残・新規プラットフォーム獲得、(c) FCFと有利子負債、(d) 政策依存度、を確認したい。
関連テーマの蓄電池・自動車部品・パワー半導体・車載半導体・全固体電池・自動運転 を併読すると、EVバリューチェーン全体が見渡しやすい。